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気管支喘息の症状と対処法【医師監修】自己判断での治療中断はダメ!上手に喘息コントロール

公開日: 2017-11-20
更新日: 2017-11-20
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厚生労働省の調査によると、喘息患者数は約120万人と推計されています。 患者数自体は、過去とあまり変わりはありませんが、喘息で入院する人や亡くなる人は減っています。 これは、現在の喘息治療が日々進歩している結果だと考えられます。正しい知識もって、上手に喘息と付き合っていけば、喘息は怖い病気ではありません。

医師紹介

田中 佐和子の画像
田中 佐和子院長
東京女子医科大学 医学部卒
日本呼吸器学会指導医、内科学会専門医、アレルギー学会専門医、東京内科医会 理事、日本内科学会 評議員
喘息死総数の年次推移

そもそも喘息ってどんな病気?

喘息は、空気の通り道(気道)が常に炎症していることが原因となって、以下のようなことが起こっています。

・ 気道の過敏性が増す
気道が過敏になり、ちょっとした空気の変化で咳が出ます。
例えば、冷たい空気やお線香の煙を吸い込んだだけでも咳が出たりするなど、気道へ吸い込む空気の変化を過敏に感じ取って反応してしまいます。

・ 化学伝達物質(ケミカルメディエーター)の放出
気道が炎症を起こしていることが原因で、炎症細胞が活発になり、さまざまな化学伝達物質(ケミカルメディエーター)を放出します。喘息での代表的な化学伝達物質に、ヒスタミンやロイコトリエンがあります。
この化学伝達物質は、気管支の収縮や気道のむくみを引き起こすため、気道が狭くなってしまいます。

・ 気道のリモデリング
喘息では、気道が慢性的に炎症をおこしているため、体はこれを治そうとして、絶えず気道の作り直し(リモデリング)をします。
しかし、この作り直しの期間が長くなると、だんだんと気道の壁は厚くなってしまいます。その結果、気道は細くなり、空気の通る量が少なくなってしまいます。
この空気の通る量が少なくなることを、気流制限といいます。
喘息の大きな問題は、このリモデリングによる気流制限が一度出来上がってしまうと改善しないということです。

症状 - 特徴は夜間や早朝の発作

咳をする女性

〇主な症状

  • ヒューヒュー、ゼーゼーなどの呼吸音(喘鳴・ぜんめい)
  • 息が吐きづらい、息を吐くのに時間がかかる(呼気延長)
  • 夜間や早朝の発作

なぜ発作は夜間や早朝に起きやすい?

発作が夜間や早朝に起こりやすいのは以下のような理由と考えられています。

  • 夜になると自律神経のうち副交感神経が活発になり気道が狭くなりやすい
  • 明け方は気温が低下し空気が冷たくなるため気道が刺激される
  • 寝ている間は体の動きが少なくなり気道分泌物が溜まりやすく、呼吸がしづらくなる

気管支喘息の原因はさまざま

一般的な喘息の原因には、「アトピー型」「非アトピー型」があります。

アトピー型

特定のアレルゲンに対してアレルギー反応を起こすことが原因となる喘息です。アレルゲンとはアレルギーの原因となるもので、ハウスダストや花粉、ダニやペット、食べ物などがあります。
子供の喘息に多いのが、このアトピー型です。

非アトピー型

発作の原因にアレルギーが関係していない喘息です。非アトピー型の原因は明らかになっていません。
大人の喘息に多いのが、この非アトピー型です。
その他にも、以下のような特殊なことが原因になる喘息もあります。

運動誘発喘息

運動が原因で喘息発作が起こります。発作が起こるのは、以下のような理由からと考えられています。

  • 呼吸が荒くなり気道の水分が蒸発することが気道の収縮につながる
  • 運動により自律神経が乱れることが気管支の収縮につながる

運動誘発喘息と診断されても運動ができなくなるわけではありません。かかりつけ医と相談しながら、以下のようなことに気をつけて運動することが可能です。

  • ウォーミングアップをして徐々に体を慣らす
  • 気道が乾燥しないようにマスクをする
  • 運動前に喘息用の薬を使用する

アスピリン喘息

アスピリンという薬を服用することが原因で喘息発作が起こります。アスピリンに類似した薬でも発作が起こることがあります。
これらの薬は消炎鎮痛剤と呼ばれ、炎症を抑えたり痛みを和らげる効果があり、風邪薬頭痛薬(鎮痛剤・痛み止め)解熱剤としてよく服用されます。

この薬を服用すると、ロイコトリエンが大量に産生されます。
ロイコトリエンには、気道がむくんだり、気道を収縮させる作用があるため、喘息発作につながります。
薬を飲んで呼吸が苦しくなったりする場合は、アスピリン喘息かもしれません。
市販薬の中にも、アスピリンを含む薬やアスピリンと同じ作用のある薬があるので、注意が必要です。

タバコは喘息発作や喘息を悪化させる原因になります!

たばこの煙

喘息は慢性的に気道が炎症を起こして狭くなっている状態です。
それに加えて喫煙をすると、その炎症をさらに悪化させることになります。

タバコを吸う喘息患者は、症状が重症化しやすく、死亡率も高いという報告もあります。逆を言えば、タバコを吸わないだけで、症状や発作は改善します。
また、自身が喫煙していなくても、タバコから出ている煙や、喫煙者が吐き出す煙を吸うこと(受動喫煙)でも同様に、発作の原因や喘息の悪化につながります。

特に子供の受動喫煙は、喘息の発症自体に関わるという報告もあり、親がタバコを吸っている場合、子供が喘息になる危険は20%増加するとされ、乳児の場合はより気道の過敏性につながりやすくなります。
さらに両親ともに喫煙をしている場合はよりリスクが高まります。
妊娠中の喫煙も、胎児の肺の発達に影響を与え、生後、喘息の発症に関連する危険があります。

このように、喫煙は喘息にとってさまざまな危険因子を含んでいるだけではなく、健康に悪影響を与えることは明らかです。
喘息患者の方はもちろん、周囲に喘息患者がいる場合は、禁煙の良い機会ととらえ、禁煙に挑戦してみませんか。

喘息の検査

喘息の検査(聴診器)

喘息の検査には以下のようなものがあります。

〇 スパイロメトリー
筒をくわえて数回普通の呼吸を行ったあと、精一杯息を吸い、勢いよく息を吐きます。

この検査では、気道の開き具合や肺活量を確認します。喘息の場合、気道が狭くなっているので、息を吐きだせる量が少なくなります。

一方で、喘息で肺活量が減ることはないため、肺活量が減っている場合は、他の病気が疑われます。

〇 ピークフロー
専用の筒(ピークフローメーター)を思いきり吹いて、最大の呼吸量を測定します。

この検査では、気道の開き具合を確認します。

ピークフローメーターは市販もされているので、自宅で簡単に測定することができ、喘息管理にも有効です。

〇 呼気中一酸化窒素濃度(FeNO)測定
機械に息を吹き込んで測定します。

この検査では、気道炎症の程度を推測することができます。息の中にどのくらい一酸化窒素を含んでいるかで、炎症の状態を知ることができます。

〇 血液検査 / パッチテスト
採血した血液でアレルギー反応を確認したり、パッチテストでは、アレルゲンエキスを皮膚につけてその反応を確認します。

この検査では、アレルギー反応の有無の確認やアレルゲンを特定します。

気管支喘息の治療 - 飲み薬と吸入薬

治療薬イメージ

喘息の治療は、重症度によって分類され、それに合わせて治療内容を選択します。
治療開始後は、その効果に応じて、状態が改善しない場合はより強い治療へ、逆に、3~6ヶ月程度症状が落ち着けば、より軽い治療にうつります。

治療の基本は、長期管理薬発作治療薬を使用した薬物治療です。
長期管理薬とは、発作が起こらないように毎日続ける薬で、発作治療薬とは発作が起こったときに発作をしずめるための薬です。

喘息治療でよく使われる薬には、以下のようなものがあります。
これらを単体で使用するものもあれば、何種類かの薬の成分をひとつの薬の中に含ませて使用するもの(配合剤)もあります。

〇 ステロイド薬
ステロイド薬には炎症を抑える強い効果があり、長期管理薬として使用されます。

薬の形状は、吸入薬、飲み薬、点滴とさまざまです。

特に、吸入するタイプのステロイド薬は、軽症から重症まで、使用される状態の幅が広く、喘息治療の基本薬です。

飲み薬のステロイド薬と比較しても、吸入薬は副作用が少ないため、毎日継続的に使用することができます。

薬の種類や吸入の仕方にはいくつかの選択肢があるので、うまく吸入できていないなど使いづらさを感じるときには、かかりつけ医に相談しましょう。

〇 β2刺激薬
β2刺激薬は、アレルギーによる気道の炎症を抑えたり、気道の収縮を抑える効果があり、長時間作用型短時間作用型があります。

長時間作用型は長期管理薬として使用されます。

薬の形状は、吸入薬、貼り薬、飲み薬とさまざまです。吸入薬には、あらかじめステロイド薬の成分を含んでいるもの(配合剤)もあります。

短時間作用型は発作治療薬として使用されます。素早く気管支を拡げる効果があるため、発作治療薬の中では中心的な存在です。

喘息発作が起きたときに、短時間作用型のβ2刺激薬を吸入すると、息苦しさが改善するため、長期管理薬を使用せずに、短時間作用型のβ2刺激薬だけを使用してしまうケースがありますが、頻回に短時間作用型のβ2刺激薬を使用すると気道の状態が悪化することが報告されています。

さらに、短時間作用型のβ2刺激薬には動悸など、心臓への負担もあるので、あくまで短時間作用型のβ2刺激薬は緊急時の対処薬と考え、頻回に使用してしまう場合は、かかりつけ医に長期管理薬の見直しを相談しましょう。

〇 ロイコトリエン受容体拮抗薬
ロイコトリエン受容体拮抗薬は、炎症を抑えて、気道が細くなり空気の通る量が少なくなってしまう現象(気流制限)を改善する効果があります。

長期管理薬として使用され、薬の形状は、飲み薬のみです。

〇 テオフィリン薬
テオフィリン薬は、気管支を広げる効果があり、長期管理薬として使用されます。

薬の形状は、飲み薬と坐薬があります。

現在、喘息の治療薬には、さまざまな特徴をもった薬があり、新しい薬の開発吸入器の改良も進んでいます。

さらに最近では、重症喘息に対する注射薬(オマリズマブ、メボリズマブ)や、複数の薬を使っても改善がみられない場合には、気管支内視鏡を使って気管支内部を温めて喘息症状を安定させる新たな治療法(気管支サーモプラスティ(BT))も登場しています。

もし、現在の治療や薬に不安や不便を感じた場合は、積極的にかかりつけ医に相談してみましょう。

自己判断での治療中断は危険!

喘息治療の難しいところは自覚症状がなければ落ち着いている、もしくは治った、とは判断できないところです。

喘息の症状や発作がなくても、気道が炎症を起こしていることはよくあります。
この状態が継続すれば、その後の喘息発作や喘息死の危険性が増えてしまいます。
喘息発作が起きないことは治療目標の1つですが、長い目で見た場合は気道の炎症が落ち着き、気道のリモデリングが進まないことが重要です。

症状や発作がないからといって自己判断で治療や服薬を中断することなく、かかりつけ医の指示に従いましょう。

自覚症状がなく、どのように状態を把握したらよいのかわからない場合は、自分で簡単に気道の状態を確認することができるピークフローの測定を日常的に取り入れてみましょう。

大人の気管支喘息

考える男女

大人の喘息は、子供の時に発症した喘息(小児喘息)から続く場合と、大人になってからはじめて喘息になる場合があります。

小児喘息から大人の喘息に移行する割合は約30%と報告されています。また、小児喘息で一旦治療が不要になっても、その内の約30%は大人になってから再発するとされています。

大人になってから喘息になる人は、成人喘息全体の70~80%を占め、特に40~60歳代での発症が60%以上と報告されています。
子供では、特定のアレルゲンが原因となるアトピー型の喘息が多いのに比べて、大人ではアレルゲンを特定できない非アトピー型の喘息が多いという特徴があります。

大人の気管支喘息は治りにくい

大人の喘息は子供と比べると治りにくく、重症化しやすい特徴があります。
そのため、大人の喘息は治らないことを前提とされ、治療が不要になることはほとんどないと考えましょう。
症状がない場合や薬物治療が不要になった場合でも、再発予防のための治療や定期的な受診が必要です。

一方で、子供の喘息が大人に比べて治りやすいのは、気道や肺が成長過程にあるためと考えられています。
ただ、大人の喘息も、発作を防いで、症状をきちんとコントロールすることができれば、健康な人と同じ日常生活を過ごすことができます
そのためにも、自己判断で治療や通院を中断することなく、かかりつけ医の指示に従いましょう。

発作が出たときの対処法

対処方法(救急車イメージ)

同じ喘息でも、経過や重症度などによって、対処法が異なる場合があるため、あらかじめかかりつけ医に確認しておきましょう。
基本的な対応は以下の通りです。

会話ができる程度の発作の場合:
短時間作用型のβ2刺激薬を、かかりつけ医から指示されている回数吸入します。あらかじめ発作用として飲み薬が処方されている場合は、それも服用しましょう。

その後、20分たっても改善が見られないときには、再度、短時間作用型のβ2刺激薬を吸入して20分様子を見るという流れを2回(初回の吸入も含めると合計3回まで)繰り返してみましょう。

最初の発作から1時間経過しても状況が改善されない場合は、4回目の吸入をしたうえで、医療機関を受診しましょう。

発作 → 吸入(1回目) → 20分様子を見る → 吸入(2回目) → 20分様子を見る → 吸入(3回目) → 20分様子を見る → 吸入(4回目) → 医療機関を受診

会話ができないほどの発作の場合:
短時間作用型のβ2刺激薬を吸入しつつ、早急に医療機関を受診しましょう。

安易な救急車の要請は勧められませんが、高齢者の場合や、歩けないほどの症状が出ている場合など、必要な場合には救急車の要請も検討しましょう。

※ これらは、喘息発作に対する一般的な対応方法です。かかりつけ医から指示されている方法がある場合はそちらを優先して従ってください。

大切なのは日常生活での管理とコントロール:チェックリスト

チェックポイント

喘息の治療には定期的な医療機関の受診が必要ですが、毎日の体調管理は患者自身が行わなければなりません。そのために重要なことは以下の4つです。

  1. 喘息の記録をつける
  2. ピークフローの測定
  3. 原因(アレルゲン・タバコなど)の除去
  4. 感染予防


1.喘息の記録をつける
喘息といっても、発作のきっかけや症状は人によって異なります。自分の喘息の特徴を把握するためにも、以下のような項目を記録しましょう。

  • その日の気候
  • 発作の有無
  • 症状の内容
  • 発作の出た時間
  • 運動の有無
  • 薬の使用

    など

病院に持参すれば、発作の特徴が医師にもわかりやすく有用です。習慣化すれば、自分の喘息について「今日の天候だと発作が出るかもしれない」といった予防にも役立ちます。

2.ピークフローの測定
喘息の記録にぜひピークフローの値も記録しましょう。測定は朝夕2回行いましょう。

測定器は、2,000~3,000円程度で購入できます。

高血圧の人が血圧計を購入して毎日測るように、喘息の人はピークフローを測るようにすれば、普段の気道の状態を把握することができます。

3.原因(アレルゲン・タバコなど)の除去
喘息の原因がわかっているのであれば、できる限り原因を取り除くことが重要です。

・ ダニやハウスダスト
アレルゲンの原因になりやすいダニやハウスダストに対しては、こまめな掃除が大切です。

・ タバコ
喘息の人が共通して避けた方が良いのはタバコです。

喫煙者の人はできるだけ早く禁煙をすることが大切です。また、非喫煙者の人は、なるべくタバコの煙を避けるようにしましょう。

・ 大気汚染
排気ガスやPM2.5などの大気汚染にも気をつけましょう。大気汚染の酷い日や場所への不要な外出は控える、マスクをするといった自己防衛を行いましょう。

・ 天候や気温
天候や気温の変化もきっかけになりやすいので、羽織物などで調節を行ったり、エアコンも適度な温度設定で使用しましょう。

4.感染予防
風邪やインフルエンザへの感染は喘息発作の原因になります。流行中は人ごみを避ける、外出の際はマスクをする、手洗いの徹底など、できる限りの感染予防を行いましょう。

※当コラムは東京内科医会のご協力によって作成されています。

東京内科医会は、常に最新の医学知識を学び、最良の医療を実践している、熱意のある医師の集まりです。