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プール熱(咽頭結膜熱)感染力の強いアデノウイルス【医師監修】手足口病、ヘルパンギーナとの違いは?プール以外でも感染する

公開日: 2018-11-19
更新日: 2018-11-19
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プール熱はプールが原因で感染することがあるため、そう呼ばれることがありますが、正式名称は「咽頭結膜熱」で、アデノウイルスによっておこる感染症です。
プール熱と呼ばれるだけに、夏に流行することが多いですが、季節を問わず感染がみられます。
また、プール熱には特別な治療法や薬がなく、感染すると登校、登園も停止になってしまうため、予防が重要です。

医師紹介

高橋 系一の画像
高橋 系一医師
順天堂大学 医学部卒
日本小児科学会小児科専門医
日本小児神経学会小児神経専門医
日本てんかん学会専門医
学校法人 道灌山学園理事長

プール熱の原因はアデノウイルス - 強い感染力

プール熱(咽頭結膜熱)は、アデノウイルスに感染することによっておこります。このアデノウイルスの感染力はとても強く、簡単に周囲に感染が広がってしまいます。

アデノウイルスには種類がいくつかあるため、一度プール熱になっても、別の種類のアデノウイルスに感染すると、再びプール熱になることがあります。

一度感染したウイルスに対しては免疫を獲得するため、同じ種類のウイルスが原因でプール熱になることはありません。

プール熱の流行時期

プールボール

プール熱には1年中かかる可能性がありますが、アデノウイルスは暑くて湿度の高い環境を好むため、夏場に流行しやすくなります。
特に5月末頃から増えはじめ、6,7月にピークをむかえます。

主な感染経路は「飛沫感染」「接触感染」

プールが原因で感染することがあるのでプール熱と呼ばれていますが、実際はプールに関係しないところでも感染します。

感染力が非常に強く、主な感染経路は、飛沫感染と接触感染です。

飛沫感染 :
感染している人の咳やくしゃみなどに含まれるウイルスを吸いこむことで感染します。

接触感染 :
手指やもの、食品などについたウイルスが主に口・鼻から体内に入ることで感染します。

水の消毒が不十分なプールに、なんらかの理由でアデノウイルスが含まれると、プールの水を介して感染する可能性があります。

プール以外では、プール熱になると唾液鼻水目やに便にもウイルスが含まれるため、それらを介して、目の結膜や鼻、口、喉の粘膜からウイルスが体内に侵入、感染します。

さらに、プール熱は症状がなくなったあとも、喉からは1~2週間程度、便からは1か月程度もウイルスが排出されることがあります。

このように、症状がなくなってもしばらくは他の人にうつしてしまう可能性があるため、注意して過ごしましょう。

プール熱の症状 - 発熱、喉の痛み、結膜炎が特徴

発熱で寝込む子ども

プール熱の特徴的な症状は、咽頭結膜熱とうい名のとおり、喉の痛み、結膜炎、そして発熱です。

ただし、これらすべての症状が必ずあらわれるわけではないため、風邪や結膜炎などと見分けがつきにくい場合があります。

〇 潜伏期間
5~7日

〇 症状
・ 発熱
38℃以上の高熱が3~7日間程度続く

・ 喉の炎症
喉の痛み / 喉や扁桃(腺)が真っ赤に腫れ、扁桃(腺)に白色の浸出物(分泌液)がみられる

・ 結膜炎
充血 / 目の痛み / かゆみ / 目やに / まぶしく感じる / 涙が止まらない など

一般的に、まずは片方の目にあらわれ、その後、反対側の目にも同様の症状があらわれる

・ その他の症状
腹痛 / 下痢 / リンパ節の腫れ / 頭痛 / 咳 / 食欲不振 / 倦怠感 など

これらの症状は3~5日間ほど続きます。

基本的に、プール熱は経過がよいことがほとんどですが、耳や鼻にウイルスが侵入して中耳炎副鼻腔炎(蓄膿症・ちくのう症)を起こしたり、まれに肺炎などを起こして重症化することもあります。

プール熱と手足口病、ヘルパンギーナとの違い

はてなマークと女性

夏に流行る子どもの病気はプール熱のほかに、手足口病とヘルパンギーナがあります。

手足口病 :
主に、5歳以下の乳幼児がかかる感染症で、手のひらや足の甲や裏、口の中などに2~3mm程度の水ぶくれ状の発疹(水疱性発疹)ができます。

発熱をともなうことがありますが、微熱(38℃以下)であることがほとんどです。

■ 関連コラム
手足口病 【医師監修】 原因・症状・予防法 大人にもうつる 何度もかかる可能性

ヘルパンギーナ :
乳幼児を中心に夏に流行する感染症で、代表的な夏風邪の一種です。

突然の発熱(38℃を超えるの高熱)にともない、喉の痛みや腫れ、口の中に小さな水ぶくれ状の発疹(水疱性発疹)などの症状があらわれます。

■ 関連コラム
ヘルパンギーナ【医師監修】主な症状は高熱 喉の痛み 口内炎 大人にもうつる可能性

これらの症状の中には、プール熱と似ているものもありますが、違いは目の症状と口の中の水ぶくれ状の発疹の有無で、「目の症状がある」「発疹がでていない」場合はプール熱であると見分けることができます。

プール熱以外にもある!アデノウイルスが原因の感染症

ウイルスのミニチュア

アデノウイルスが引き起こすのはプール熱だけではありません。
感染するアデノウイルスの種類によっては、以下のような感染症の原因になることがあります。

呼吸器系の感染症

基本的に目の症状ではなく、喉や扁桃(腺)の炎症をはじめとした風邪のような症状があらわれます。
感染するウイルスの型によっては、重症の肺炎を起こすこともあります。

流行性角結膜炎(はやり目)

流行性角結膜炎(はやり目)は、以下のように目の症状が主体で、プール熱のように高熱がでることはなく、喉の赤み、痛みもほとんどありません。

〇主な症状
目の充血 / まぶたのむくみ / 目やに / 涙 / 目の痛み / 耳前のリンパ節の腫れ / まぶたの裏側に小さなブツブツができる など

出血性膀胱炎

おしっこをするときの痛みと、おしっこに血が混ざることが特徴的な症状です。

〇主な症状
排尿痛 / 血尿 / 頻尿 / 残尿感 など

胃腸炎

〇主な症状
腹痛 / 嘔吐 / 下痢 / 発熱 など

プール熱は検査をしないことも多い

プール熱にかかっているかを調べる検査は主に、迅速診断キットを使う検査と血液検査があります。
しかし、検査をせずに、そのときの症状や流行状況をみて診断されることもあります。

迅速診断キット

綿棒で喉やまぶたの裏側をこすって、アデノウイルスが含まれているかを診断キットで調べます。15分ほどで結果がでるので、簡単に検査することができます。
ただし、検査をするタイミングや採取したウイルスが少ない場合などは、アデノウイルスに感染していても、結果が陰性になってしまうことがあります。

血液検査

採血した血液から、アデノウイルスに感染しているかを調べます。血液検査の場合、結果がわかるまで5日程度かかります。

治療は対症療法

プール熱には特別な治療方法はありません。
高熱に対しては解熱剤、喉の痛みには抗炎症剤、目の症状には目薬を使うなど、つらい症状を和らげる対症療法となります。
高熱がでる上、喉の痛みや腫れで飲食がしづらい場合があるため、脱水症状にならないよう、しっかりと水分補給をしましょう。
また、食事も刺激にならない柔らかいものにするなど、食べやすいものを摂りましょう。

保育園・幼稚園・学校への登園・登校の目安

登園する児童

集団感染を防ぐ目的で制定された学校保健安全法施行規則では、プール熱はインフルエンザなどと同じく、流行性が高いと考えられる第二種に分類され、出席停止期間は以下のように定められています。

○ 咽頭結膜熱にあつては、主要症状が消退した後二日を経過するまで。

引用) 学校保健安全法施行規則

文部科学省の「学校において予防すべき感染症の解説」では以下のようになっています。

〇 発熱、咽頭炎、結膜炎などの主症状が消退した後2日間を経過するまで出席停止とする。

引用) 文部科学省 : 学校において予防すべき感染症の解説

プール熱の主な症状である発熱、喉の痛み、結膜炎は3~5日間程度続くため、目安としては、その間とその後2日間は登園・登校ができないということになります。

学校保健安全法施行規則で出席停止と定められている場合は、通常の欠席とは扱われません

詳しい届け出方法は、各学校、教育・保育施設に確認しましょう。

大人がプール熱にかかることはまれ

寝込む女性

プール熱にかかる6割は5歳以下とされていますが、大人でもまれにかかることがあります。
特に、身近な子どもがかかったときには、感染しないよう注意が必要です。

大人がプール熱にかかった場合は、子どもとは異なり、仕事などを強制的に休まなければならないといった制限はありません。
しかし、自分の体調や周囲へ感染させてしまう可能性も考慮し、症状がなくなるまでは自宅で安静に過ごすことが勧められます。

プール熱は症状が治まった後も、喉からは1~2週間程度、便からは1か月程度もウイルスが排出されることがあります。
症状がでている間はもちろん、症状がなくなってからもしばらくは、マスクを着用したり、共用のタオルは使わないなど、周囲へ感染させないよう注意して過ごしましょう。

妊婦がプール熱になったら

妊娠した女性

妊娠中にプール熱にかかっても、原因ウイルスであるアデノウイルスが直接胎児に影響を与えることはありません。また、母乳にウイルスが入ってしまうこともありません

妊娠中のプール熱を過度に心配する必要はありませんが、妊娠中は免疫力が低下しているため、プール熱に限らず、さまざまな感染症にかかりやすく、重症化しやすい状態です。

症状があらわれた場合は、妊婦検診を受けている産婦人科に問い合わせて、指示を受けましょう。

「とにかく感染経路を断つこと」がプール熱の予防に重要

アデノウイルスには有効なワクチンがないため、予防接種での予防はできません
予防法はとにかく感染経路を断つことです。感染者との接触を避けることはもちろん、感染者が触ったり使ったりしたものの扱いにも注意しましょう。
具体的には、以下のようなことに注意しましょう。

〇 プール熱の予防

  • 感染者との接触を避ける
  • 石けんを使った手洗い、手指の消毒
    ※ 特にトイレのあとは徹底しましょう
  • タオルの共有はしない
  • 目やにや涙はティッシュで拭き その都度処分する
  • 洗濯物を分けて洗う
  • プールや共同浴場などでは
    - 前後にシャワーを浴びる
    - 上がるときには目を洗ってうがいをする
  • 感染者の触れたものを消毒する

など

消毒にはエタノールや塩素系(次亜塩素酸ナトリウム)の消毒液

消毒液のスプレー

家族や身近な人がプール熱に感染した際は、手すり、ドアノブ、おもちゃ、その他日用品など、よく触れるところを消毒しましょう。
消毒液としては、濃度200ppm(0.02%)の塩素系(次亜塩素酸ナトリウム)消毒液エタノールが適しています。
塩素系(次亜塩素酸ナトリウム)消毒液は金属を腐食させる作用があるため、金属部分に使用する場合は、10分程あとに水拭きで十分にふき取りをしてください。
また、布類に使用する場合も、色落ちや生地を傷めることがあるため、注意して使用しましょう。
塩素系(次亜塩素酸ナトリウム)消毒液は、家庭用の塩素系漂白剤(ハイター、ブリーチなど)を以下の例のように水で薄めることで簡単につくることができます

例)
濃度200ppm(0.02%)の塩素系(次亜塩素酸ナトリウム)消毒液 :
〇 1Lの水に対して家庭用塩素系漂白剤4ml

※家庭用塩素系漂白剤の濃度は約50000ppm(約5%)です

エタノールは手指の消毒にも有効です。
消毒用エタノールでは濃度が低く、消毒効果が弱いため、80%~90%の濃度を目安とするのがよいでしょう。