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細菌性食中毒の種類・それぞれの症状・対処法・予防法【医師監修】

公開日: 2017-08-07
更新日: 2017-08-07
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暑い季節に流行するイメージがある食中毒。 しかし、食中毒にはさまざまな種類があり、カンピロバクターやサルモネラ菌のような細菌性の食中毒は暑い季節に起こりやすく、ノロウイルスのようなウイルス性の食中毒は寒い季節、キノコやフグなどが原因となる自然毒は春や秋に多く起こります。 そのため、食中毒は季節を限らず1年を通して注意する必要があります。 ここでは、細菌性食中毒の種類やそれぞれの症状、対処法、予防法などを解説します。

医師紹介

神保 勝一の画像
神保 勝一院長

食中毒とは

有害な細菌やウイルス・有毒な物質が含まれる食品や飲み物を食べたり飲んだりすることで起こる下痢、腹痛、発熱、嘔吐などの症状の総称です。
食中毒の原因は、細菌、ウイルス、自然毒、化学物質、寄生虫などさまざまで、その原因によって、潜伏期間や症状、予防方法が異なります。
原因や経過によっては死に至ることもあり、子供や高齢者、抵抗力の弱い人は重症化することがあるため、特に注意が必要です。

主な食中毒の種類

原因菌イメージ

食中毒の主な原因には以下のようなものがあります。

  • 細菌性(カンピロバクター、サルモネラ菌 など)
  • ウイルス性(ノロウイルス など)
  • 動物性自然毒(フグ など)
  • 植物性自然毒(キノコ など)
  • 寄生虫(アニサキス など)
  • 化学物質(ヒスタミン など)

細菌性食中毒とは?

細菌性の食中毒は、気温や湿度が高い環境で原因となる細菌が増殖することによって起こります。
そのため、暑い季節に起こりやすい食中毒ですが、冬でも暖かく湿度が高い室内などの環境であれば細菌は増殖するため、季節に限らず注意が必要です。
細菌性食中毒には、以下の2つの分類があります。

感染型:
原因となる菌が食品とともに体内に入って、腸管内で増殖することによって起こります。

カンピロバクター / サルモネラ菌 / 腸管出血性大腸菌(O-157など) / 腸炎ビブリオ / エルシニア菌 など

毒素型:
原因となる菌が食品中で増殖する際に毒素をつくりだします。その毒素が食品とともに体内に入ることによって起こります。

ボツリヌス菌 / ウェルシュ菌 / 黄色ブドウ球菌 / セレウス菌 など

それぞれの細菌性食中毒の症状・特徴・予防ポイント

チェックポイント

カンピロバクター

主に鶏や牛などの家畜やペットなど多くの動物が保菌しています。
通常の細菌性食中毒に感染する菌量(100万個単位)に比べ、少量の菌(100個程度)でも感染する感染力の強い菌です。
乾燥や熱に弱く、酸素の少ない環境を好みます。通常の酸素量がある環境や、逆に酸素が全くない場所では増殖しません。

【感染原因】

  • 生や加熱が不十分な肉(特に鶏肉)
  • 井戸水や湧き水
  • 十分に洗っていない生野菜
    など

【潜伏期間】 2~7日

【症状】

下痢 / 腹痛 / 発熱 / 吐き気 / 嘔吐 / 頭痛 / 悪寒 / 倦怠感 など

【予防ポイント】

  • 食肉(特に鶏肉)は十分に加熱調理する(中心部分を75℃以上で1分間以上)
  • 生や加熱が不十分な肉(特に鶏肉)料理を避ける
  • 生野菜は十分に洗う
  • 食肉と他の食品の調理や保存には調理器具や容器を分ける
  • 調理器具の洗浄・消毒・乾燥を十分に行う
  • 調理後の手洗いは十分に行う
    など

サルモネラ菌

昆虫や動物、川、下水、湖など、自然界に広く存在します。乾燥に強く、熱に弱い特徴があります。

【感染原因】

  • 生や加熱が不十分な卵、肉(特に鶏肉)、魚
    など

【潜伏期間】 6~72時間

【症状】

吐き気 / 腹痛 / 下痢 / 発熱 / 嘔吐 など

【予防ポイント】

  • 卵や食肉(特に鶏肉)は十分に加熱調理する(中心部分を75℃以上で1分間以上)
  • 生卵を食べる場合は新鮮なものに限る
  • 調理器具の洗浄・消毒・乾燥を十分に行う
  • 調理後の手洗いは十分に行う
  • 卵や生肉は低温で保存する
  • ペットや昆虫に触れたあとの手洗いは十分に行う
    など

腸管出血性大腸菌(O-157など)

大腸菌は、牛などの家畜や人の腸内にも存在し、そのほとんどには害はありません。
大腸菌の中でも、ベロ毒素をつくりだすものが “腸管出血性大腸菌” とされ、代表的なものには「O157」、その他にも「O26」「O111」などがありますが、食中毒になる原因のほとんどは「O157」です。
通常の細菌性食中毒に感染する菌量(100万個単位)に比べ、少量の菌(100個程度)でも感染する感染力の強い菌です。

【感染原因】

  • 生や加熱が不十分な肉
  • 十分に洗っていない生野菜
  • 井戸水や湧き水
    など

腸管出血性大腸菌の感染原因となる食品は、食べ物、飲み物を問わずさまざまです。洗浄や加熱など衛生的な取り扱いが不十分な食品には注意が必要です。

【潜伏期間】 1日~10日
他の細菌性の食中毒と比べ、潜伏期間が長いことも特徴です。

【症状】

激しい腹痛 / 下痢 / 頻回の水様便 / 血便 / 軽度(37℃程度)の発熱 など

重症化すると、合併症(溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症など)を起こすことがあり、経過によっては死に至ることもあります。

【予防ポイント】

  • 食肉は十分に加熱調理する(中心部分を75℃以上で1分間以上)
  • 生野菜は十分に洗う
  • 食肉と他の食品の調理や保存には調理器具や容器を分ける
  • 調理器具の洗浄・消毒・乾燥を十分に行う
  • 調理後の食品はなるべく早く食べきる
    など

腸炎ビブリオ

高濃度の塩分がある環境を好むため、海水中や海底の汚泥などに分布しています。

【感染原因】

  • 生の魚介類
    など

【潜伏期間】 12時間前後

【症状】

激しい腹痛 / 下痢 / まれに血便 / 発熱 / 吐き気 / 嘔吐 など

高齢者や抵抗力の弱い人重症化し、経過によっては死に至ることもあります。

【予防のポイント】

  • 魚介類はよく洗う
  • 魚介類は低温で保存する
  • 魚介類の加熱が必要な場合は中心まで十分に加熱する
  • 調理器具の洗浄・消毒・乾燥を十分に行う
    など

エルシニア菌

主に豚などの家畜やペットなどの動物が保菌しています。菌を持っている動物の糞便の中にも存在します。
低温や酸素の少ない水中でも生存することができるため、冷蔵庫の中でも増殖します。

【感染原因】

  • 生や加熱が不十分な肉(特に豚肉)
  • 長期間冷蔵した肉(特に豚肉)
  • 井戸水や湧き水
  • 殺菌が不十分な加工乳
    など

【潜伏期間】 2日~5日
他の細菌性の食中毒と比べ、潜伏期間が長いことも特徴です。

【症状】

腹痛 / 下痢 / 発熱 / 虫垂炎 / 関節炎 / 咽頭炎 など

【予防ポイント】

  • 食肉(特に豚肉)は十分に加熱調理する(中心部分を75℃以上で1分間以上)
  • 肉(特に豚肉)の長期冷蔵保存は避ける
  • 十分に殺菌されていない飲料(水、加工乳)は避ける
  • 調理器具の洗浄・消毒・乾燥を十分に行う
    など

ボツリヌス菌

土壌中や河川、動物の腸管内など、自然界に広く存在します。
ボツリヌス菌は、麻痺症状を起こすボツリヌス毒素をつくりだします。酸素には弱い一方で、乾燥や熱には強く、毒素をなくすには十分に加熱(80℃で30分間 / 100℃で10分間)する必要があります。

【感染原因】

  • 瓶詰、缶詰、真空パック食品
  • いずし(野菜と魚の乳酸発酵食品)
  • はちみつ(1歳未満の乳児)
  • コーンシロップ(1歳未満の乳児)
    など

【潜伏期間】 5時間~8日

【症状】

吐き気 / 嘔吐 / 脱力感 / 倦怠感 / 筋力低下 / 呼吸困難 / ものを飲み込みづらい / うまく話せない など

【予防ポイント】

  • 食品は十分に加熱調理する
  • 家庭で瓶詰めなどを作る際は材料をよく洗い、調理温度や保存方法に十分注意する
  • 瓶詰、缶詰、真空パック食品で異常のあるものは避ける(膨張、異臭など)
  • 1歳未満の乳児にはちみつ、コーンシロップやそれらが含まれる食品を与えない
    など

ウェルシュ菌

人や動物の大腸内に存在する常在菌で、その他にも土壌中など、自然界に広く存在します。
ウェルシュ菌は、エンテロトキシンという毒素をつくりだします。酸素には弱い一方で、熱には強く、毒素をなくすには十分に加熱する必要があります。

【感染原因】
加熱調理されたあと、そのまま放置して冷めた食品が原因になることが多いです。

  • カレー、シチュー、スープ、煮物
  • 給食、弁当
    など

【潜伏期間】 6~20時間

【症状】

腹痛 / 下痢 など

【予防ポイント】

  • 加熱調理した食品は短時間で冷却、低温保存する
  • 食品を再加熱する際は十分に加熱する
    など

黄色ブドウ球菌

人や動物の皮膚、鼻や口の中、腸管内、傷口などに存在する常在菌です。
黄色ブドウ球菌は、エンテロトキシンという毒素をつくりだします。菌自体は熱に弱いのですが、この菌が作り出す毒素は熱に強く、一度毒素ができてしまうと、過熱をしても食中毒は防ぐことはできません。

【感染原因】

  • 穀類や穀類を使った加工食品
  • 加熱後に手指を使って作る食品
    おにぎり、いなりずし、巻きずし、弁当、調理パン など

【潜伏期間】 30分~6時間

【症状】

吐き気 / 嘔吐 / 腹痛 / 下痢 など

【予防ポイント】

  • 調理前の手洗いは十分に行う
  • 手指に傷がある場合は調理を控える
    または 手袋をするなど傷が食品に直接触れないように注意する
  • 食品は低温で保存する
    など

セレウス菌

河川や土壌中など自然界に広く分布しています。
セレウス菌は、エンテロトキシンの他に、嘔吐毒(セレウリド)という毒素をつくりだします。熱に強く、加熱での殺菌は難しいことが特徴です。
つくられる毒素によって、「嘔吐型」「下痢型」に症状がわかれます。

【感染原因】

  • 穀類や穀類を使った加工食品
    チャーハン、ピラフ、焼きそば、スパゲッティ など

【潜伏期間】

嘔吐型 : 30分~6時間
下痢型 : 6~16時間

【症状】

吐き気 / 嘔吐 / 腹痛 / 下痢 など

【予防ポイント】

  • 米や麺類を使った大量調理、作りおきをしない
  • 調理後の食品は常温で保存しない(保温・保冷して保存する)
    など

食中毒の対処法は?自己判断で薬は飲まない!

薬を飲む女性

食中毒の特徴的な症状である嘔吐や下痢は、身体が原因物質を体内から出そうとしている反応です。自己判断で下痢止め吐き気止めなどの薬を服用はせず、早めに医療機関を受診しましょう。
また、脱水症状にも注意が必要です。嘔吐や下痢が続く場合は、吸収されやすいスポーツドリンクなどでしっかりと水分補給をしましょう。
さらに、食中毒の原因によっては、血便高熱意識障害などの症状があらわれることがあります。このような症状があらわれた場合には、早急に医療機関を受診しましょう。

食中毒が重症化しやすいのはこんな人

以下のような人は、食中毒が重症化しやすいため、食中毒の可能性がある場合は、医療機関を受診しましょう。

  • 乳幼児や高齢者の方
  • 妊娠中の方
  • 肝臓疾患、ガン、糖尿病の治療を受けている方
  • 鉄剤を飲む必要のある貧血の方
  • 胃腸の手術を受けた、胃酸が少ない等、胃腸に問題がある方
  • ステロイドが入っている薬を飲んでいる、HIVに感染している等、免疫力が落ちている方

引用)農林水産省 「食中毒かな?と思ったら」

食中毒の治療 - 対処療法

細菌性の食中毒には特別な治療方法はありません。下痢や嘔吐に対して脱水症状にならないように、点滴などで水分や栄養補給するなどの対処療法となります。

予防三原則 - 「つけない」「増やさない」「やっつける」

野菜をかき混ぜる女性

細菌性食中毒は、原因となる細菌が食品とともに体内に入ることによって起こります。そのため、細菌を「つけない」「増やさない」「やっつける」ということが原則になります。
それぞれの詳しい方法は以下の通りです。

つけない

「つけない」の基本は「洗う」「分ける」です。

  • 調理前 / 調理中 / 調理後 / 食事前 などによく手を洗う
  • 野菜や魚介類などは流水でよく洗う
  • 調理器具を消毒するなどして清潔に保つ
  • 生肉や魚介類は他の食品にふれないように分けて保存する
  • 野菜、肉・魚などで調理器具を分ける

ふやさない

「ふやさない」の基本は「温度管理」「早めに食べる」です。

  • 調理した食品を常温で放置しない
  • 食品に合わせて適した温度(低温・保温)で保存する
  • 調理した食品は早めに食べきる

やっつける

「やっつける」の基本は「加熱」です。

  • 十分に加熱調理する(中心部分を75℃以上で1分間以上)
  • 調理した食品を再加熱する際も十分に加熱する

夏のお弁当に注意!食中毒になりにくいお弁当作り

カラフルなお弁当

作ってから食べるまでに時間が経つことが多いお弁当は、調理や保管方法によっては、細菌が増殖して食中毒の原因になってしまいます。
湿度が高く、暑い時期は、さらに細菌が増殖しやすいため、特に注意が必要です。

お弁当づくりのポイント

① 調理前

  • 手をよく洗う
  • お弁当箱はふたのパッキン部分なども分解してよく洗う
  • お弁当箱はよく乾燥させる

② 調理

  • 当日に調理する
  • 食品は十分に加熱する
  • 卵焼きなどは半熟にせず十分に加熱する
  • おにぎりはラップなどを使い、直接手でにぎらない

③ 詰める

  • 水分、汁気はよく切る
  • ごはんやおかずは十分冷ます
  • おはしなどを使って詰め、直接手で触らない
  • 作り置きのおかずを使うときは十分再加熱する

④ 食べるまで

  • 涼しいところで保管する
  • 暑い時期や長時間持ち歩く場合は、保冷材や保冷バックなどを使用する
  • 早めに食べる

⑤ 食べるとき

  • 手をよく洗う
  • 味やにおいに違和感がしたら食べるのをやめる

食中毒を防ごう!

細菌性の食中毒にはさまざまな種類がありますが、それぞれの特徴や予防三原則をはじめとした予防法を知ることで防ぐことができます。
特に湿度の高い暑い時期は、家庭でも積極的に予防法を取り入れ、食中毒を防ぎましょう。

※当コラムは東京内科医会のご協力によって作成されています。

東京内科医会は、常に最新の医学知識を学び、最良の医療を実践する魅力を持った何かを主体に、診療を行っている医師の集まりです。