RSウイルス感染症の症状・原因・予防 | 発熱…咳…【医師監修】 乳幼児は要注意!大人もかかる!
毎年秋から初春にかけて流行しますが、季節を通して感染する可能性があります。
RSウイルス感染症は一度感染すると免疫を獲得するため、再び感染したとしても重症化することはほとんどありません。
しかし、中には高熱や強い喉の痛みなど重い症状が見られることもあるので、適切な感染予防対策を行う必要があります。
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目次
RSウイルス感染症とは…
RSウイルス感染症とは、RSウイルスに感染することによって、喉・鼻・気管・気管支・肺などに炎症が生じる病気のことです。
毎年、秋から初春にかけて流行しますが、季節を通して感染する可能性があります。
2歳以下の乳幼児がはじめて感染した場合に重症化することが多く、気管支の末端(細気管支)に炎症を起こす細気管支炎や肺炎を発症して呼吸困難に陥るケースも多々あります。
特に、以下のような乳幼児は注意が必要です。
〇 注意が必要な乳幼児
- 3か月未満の新生児・乳児
(特に新生児) - 低出生体重児
(2500g未満で生まれた赤ちゃん) - 先天性心疾患
- 免疫不全
主な症状は発熱、咳、鼻水…風邪に似た症状
RSウイルスにはじめて感染すると、発熱、咳、鼻水、倦怠感などの「喉・鼻」の症状から、強い咳や喘鳴(ゼーゼーと音のする呼吸)などの「気管支・肺」の症状に進行していきます。
さらに進行すると、気管支の末端(細気管支)に炎症を起こす細気管支炎や肺炎を起こします。
また、合併症として中耳炎や副鼻腔炎を生じやすく、耳や顔面の痛みが見られることもあります。
〇 潜伏期間
4~6日
〇 症状が続く期間
7~12日
〇 主な初期症状
・発熱
・喉の痛み
・透明な鼻水
・全身倦怠感
・食欲低下(哺乳量の減少)
など
〇 悪化した時の主な症状
・激しい咳
・喘鳴
(ゼーゼーと音がする呼吸)
・陥没呼吸
(息を吸うときに胸がへこむ)
・呼吸困難症状
(呼吸回数が多くなる、呼吸が浅くなる など)
・唇が紫色になる(チアノーゼ)
・急性脳症によるけいれんや意識障害
こんな症状があるときは受診のタイミング!
RSウイルス感染症の初期症状は、風邪と区別するのが困難なため、様子を見ているうちに重症化して呼吸困難に陥るケースも少なくありません。
そのため、特有の症状を見逃さず、正しいタイミングで医療機関を受診することが大切です。
以下のような症状がある場合は、RSウイルス感染症が疑われます。
〇 RSウイルス感染症を疑う症状
- 熱が下がらない
- 咳が長引き発作のように激しく咳き込むことがある
- ぐったりしていて元気がない
- 哺乳量や食事量がいつもより少ない
- 大量の汗をかいている
このような症状があるときは、なるべく早く医療機関を受診しましょう。
RSウイルス感染症後は喘息になるリスクがある
RSウイルス感染症は重症化して入院治療が必要になった場合でも、適切な治療を行えば、ほとんどは1週間程度で治ります。
しかし、気管支の末端(細気管支)に炎症を起こす細気管支炎を起こした場合は、将来的に気管支喘息になるリスクが高くなるとの報告が多数あります。
このようなリスクを避けるためにも正しいタイミングで医療機関を受診し、治療することが大切です。
感染経路は「飛沫感染」「接触感染」
RSウイルスは感染者の唾液や痰、鼻水、便に含まれており、飛沫感染と接触感染によって感染が広がっていきます。
飛沫感染 :
感染している人の咳やくしゃみなどのしぶきに含まれるウイルスを吸いこむことで感染します。
特に感染者の看病を近くでする人に生じやすいですが、咳やくしゃみなどのしぶきは半径2mの範囲まで飛散するため、感染者に接近しない場合でも飛沫感染を起こすことがあります。
接触感染 :
手指やもの、食品などについたウイルスが主に口・鼻から体内に入ることで感染します。
ドアノブや電気スイッチ、トイレレバーなど手に触れやすい場所や、感染者が使用した後の食器などが接触感染の原因になることが多いです。
RSウイルス感染症には何度でもかかる
一般的には、1歳までに50~70%近くの子どもが感染し、3歳までにほぼ全ての子どもが免疫を獲得するとされています。
RSウイルスの免疫は、獲得をしたらRSウイルス感染症にまったくかからなくなるというものではなく、免疫を獲得した後も何度でもかかる可能性があります。
しかし、免疫を獲得した後は、体内でウイルスが速やかに排除されるため、重症化することはほとんどありません。
ただ、そのような場合でも咳や鼻水、発熱などの風邪症状があらわれることがあるので、十分な感染予防対策が必要です。
■参考サイト
国立感染症研究所ホームページ
大人もかかる! 乳幼児との症状の違いは?
RSウイルスは3歳までにはほぼ全ての子どもが感染し、免疫を獲得すると考えられていますが、乳幼児から大人まで、どの年代の人にも感染する可能性があります。
そして、はじめてRSウイルスに感染したときと、すでに免疫を持っている状態で感染したときとでは症状のあらわれ方が大きく異なります。
〇 はじめてRSウイルスに感染した場合
はじめてRSウイルスに感染した場合、多くは重症化し、激しい咳や喘鳴(ゼーゼーと音のする呼吸)、38度以上の高熱などの症状がみられることがあります。
乳幼児の肺炎の50%、気管支炎の90%近くはRSウイルス感染症によるものとされており、乳幼児には特に注意が必要な感染症のひとつと言えます。
■参考サイト
国立感染症研究所ホームページ
〇 免疫を持っている人が感染した場合
RSウイルスに対する免疫が備わっているため、体内でウイルスが速やかに排除され、はじめて感染したときのように気管支炎や肺炎など重篤な合併症を引き起こすことはまずありません。
大人もRSウイルスに感染することはありますが、多くは微熱や喉の痛み、鼻水などの軽度な風邪症状があらわれるのみです。
しかし、はじめてRSウイルス感染症にかかった乳幼児などから感染した場合は、大人でもインフルエンザのような高熱や強い喉の痛み、倦怠感、関節痛などの症状があらわれることがあります。
これは、はじめてRSウイルスに感染すると、ウイルスを排除する力が働かない無防備な体内でウイルスが大量に増幅されるため、咳やくしゃみのしぶきからは大量のウイルスが排出され、この大量のウイルスから感染することが原因です。
RSウイルス感染症は迅速診断キットで検査可能
RSウイルス感染症にかかっているかを調べるには、主に迅速診断キットを使用した迅速検査が行われます。
迅速診断キット
綿棒で鼻水を採取して、RSウイルスが含まれているかを診断キットで調べます。
鼻水を採取してから結果が出るまでの所要時間は10分程度です。
簡便に行うことができるため、多くの医療機関で使用されていますが、保険適応には条件があり、以下のいずれかに該当する場合のみです。
それ以外の場合は自費診療(全額負担)です。
〇 保険適応の条件
- 1歳未満の乳幼児
- 先天性心疾患のある2歳以下の乳幼児
- 慢性肺疾患ある2歳以下の乳幼児
- 免疫不全のある2歳以下の乳幼児
- ダウン症候群の2歳以下の乳幼児
- 入院患者
迅速診断検査の結果、RSウイルスへの感染がわかると、追加して以下のような検査を行うことがあります。
〇 追加検査
- 血液検査
- 画像検査(レントゲン、CTなど)
- 血液ガス分析検査
血液検査
RSウイルス感染症は重症化すると、様々な細菌感染を併発することがあるため、細菌感染を起こしていないかを血液検査で調べます。
そのほか、脱水状態の有無も血液検査で確認することができます。
画像検査(レントゲン、CTなど)
喘鳴(ゼーゼーと音のする呼吸)や呼吸困難などの症状がある場合には、胸のレントゲンやCT検査が行われます。
肺炎の有無や重度な炎症によって肺の周囲に水が溜まっていないかを確認することができます。
血液ガス分析検査
重症化して呼吸困難の症状が見られる場合に行われる検査です。
足の付け根などの太い血管から血液を採取して、血液中の酸素や二酸化炭素濃度を計測します。
呼吸の状態を把握することができ、呼吸管理を行う上で重要な指標となります。
治療 - 特効薬はなく対症療法が中心…入院治療になることも!
RSウイルス感染症に特別な治療方法はありません。
高熱に対しては解熱剤、咳には咳止めなど、つらい症状を和らげる対症療法となります。高熱がでた場合は脱水症状にならないよう、しっかりと水分補給をしましょう。
軽症の場合は特別な治療は必要なく、自然に治ることがほとんどです。
しかし、重症化した場合は入院治療が必要になることも少なくありません。
入院治療では、以下のような対症療法が中心となります。
〇 入院治療
- 酸素投与
- 点滴治療
酸素投与
RSウイルス感染症は重症化すると気管支や肺に炎症を引き起こし、呼吸困難の症状があらわれます。
呼吸機能が未熟な乳幼児では、体内の酸素が不足しやすくなるため、酸素の投与が必要になることがあります。
また、強い喘鳴(ゼーゼーと音のする呼吸)などがある場合には、酸素を投与するだけでは呼吸状態が改善せず、人工呼吸器の装着が必要になることもあります。
点滴治療
乳幼児は食事量や哺乳量の減少、高熱などによって容易に脱水状態に陥ります。
尿量が少なくなって色が濃くなった、大泉門や目が落ちくぼんでいる、などが脱水状態のサインです。
このような場合には、点滴による水分補給が必要になります。
入院治療は、症状にもよりますが、1日から1週間前後におよぶこともあります。
学校・幼稚園・保育園への登校・登園の目安
各学校、教育・保育施設によって対応が異なり、一定の明確な出席停止期間は設けられていませんが、RSウイルス感染症は、流行状況などによっては第三種の感染症として扱われることがあります。
第三種の感染症は、学校保健安全法での登園・登校の目安としては以下のように定められています。
〇 病状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めるまで。
引用) 学校保健安全法施行規則
また、文部科学省の「学校において予防すべき感染症の解説」では、登園・登校の目安は以下のようにされています。
〇 発熱、咳などの症状が安定し、全身状態の良い者は登校(園)可能だが、手洗いを励行する。
感染経路を知って正しい感染予防対策を!
RSウイルスは感染力が強く、特に、感染者が家族内など身近にいる場合は、感染予防対策を怠ると高確率で感染しますので注意しましょう。
RSウイルスの感染経路は飛沫感染と接触感染です。感染予防対策は一般的な方法で行うことができ、以下のような方法が有効です。
〇 感染予防対策
- マスクの着用
- 手洗い・手指の消毒
- 触れた物・場所の消毒
マスクの着用
感染者の咳やくしゃみなどのしぶきに含まれるウイルスを吸い込まないようにするにはマスクの着用が効果的です。
さらに以下の点に注意するとより効果的です。
〇 マスクを着用する際の注意点
- 鼻まで覆うように着用する
- 同じマスクを長時間使用しない
- 感染者に近づいた場合はこまめに交換する
- マスクの表側はなるべく触らない
(ウイルスが付着している可能性があるため)
RSウイルス感染症の流行期には、人ごみへの外出時にもマスクを着用するようにしましょう。
手洗い・手指の消毒
手指に付着したRSウイルスは、10~30分は生きていることが分かっています。
手指に付着したRSウイルスを体内に取り込んでしまう前に、感染者に接した時や外出先から帰った時は、こまめに手洗い・手指のアルコール消毒をしましょう。
手洗いのみでもウイルスをある程度は洗い流すことが可能ですが、手洗い後に手指のアルコール消毒をするとより確実に予防ができます。
触れた物・場所の消毒
温度が低く乾燥した環境を好むRSウイルスは、付着する物によっては、最長で8時間生きているケースもあります。
そのようなウイルスからの接触感染を防ぐためにも、家族内など感染者が身近にいる場合には、手の触れやすい物品をこまめに消毒すると感染予防に効果的です。
消毒は、消毒用アルコールや次亜塩素酸が有効です。また、RSウイルスは熱に弱いため、食器などは煮沸消毒も効果があります。
消毒にはアルコールや塩素系(次亜塩素酸ナトリウム)の消毒液
家族や身近な人が感染した際は、手すり、ドアノブ、おもちゃ、その他日用品など、よく触れるところを消毒しましょう。
消毒液としては、濃度200ppm(0.02%)の塩素系(次亜塩素酸ナトリウム)消毒液や消毒用アルコールが適しています。
塩素系(次亜塩素酸ナトリウム)消毒液は金属を腐食させる作用があるため、金属部分に使用する場合は、10分程あとに水拭きで十分にふき取りをしてください。
また、布類に使用する場合も、色落ちや生地を傷めることがあるため、注意して使用しましょう。
塩素系(次亜塩素酸ナトリウム)消毒液は、家庭用の塩素系漂白剤(ハイター、ブリーチなど)を以下の例のように水で薄めることで簡単につくることができます。
〇 塩素系(次亜塩素酸ナトリウム)消毒液の作り方
例)
濃度200ppm(0.02%)の塩素系(次亜塩素酸ナトリウム)消毒液 :
・ 1Lの水に対して家庭用塩素系漂白剤4ml
※家庭用塩素系漂白剤の濃度は約50000ppm(約5%)です
リスクが高い赤ちゃん・子どもには予防注射がある
RSウイルスに対するワクチンは開発されておらず、通常の予防接種によって感染を防ぐことはできません。
しかし、RSウイルスに感染するリスクが高く、特定の条件に適応する赤ちゃん・子どもは、重症化を防ぐための注射(バリビズマブ / シナジス)を接種することができます。
〇 保険による治療の適応条件
- 28週以下で生まれた0歳の新生児・乳児
- 29週~35週で生まれた6か月以下の新生児・乳児
- 先天性心疾患のある2歳以下の乳幼児
- 慢性肺疾患ある2歳以下の乳幼児
- 免疫不全のある2歳以下の乳幼児
- ダウン症候群の2歳以下の乳幼児
接種方法
筋肉注射で、RSウイルスの流行初期から1か月ごと、流行期間がおわるまで接種を続けます。接種開始・終了の期間は医療機関によって異なります。
非常に高額な注射ですが、適応条件に当てはまる場合は保険適用で接種することができます。
適応条件に当てはまる場合は、かかりつけ医とよく相談の上、接種を検討してみましょう。