【医師監修】インフルエンザ治療薬・種類と特徴、知っていますか?
通常日本では、毎年11月下旬から12月上旬にインフルエンザのシーズンが始まり、1月から3月にかけて流行のピークを迎えます。
しかし、2016年シーズンは11月初旬からインフルエンザの患者さんが急増、全国的な流行も早まると予想され、対策も早めにする必要がありそうです。
それでもインフルエンザにかかってしまったときに、病院から処方される治療薬は、タミフル・リレンザが代表的ですが、その他にも種類があることや、それぞれの薬剤に特徴があることはご存知ですか?今回は、インフルエンザ治療薬の種類と特徴を解説します。
医師紹介
目次
インフルエンザ治療薬はインフルエンザを治す薬ではない!
インフルエンザ治療薬の注意点として、どの薬にも共通して言えることは、ウイルスをやっつける薬ではないということです。薬を飲んでも、ウイルスをやっつけるのはご自身の免疫です。
では、なんのために薬を飲むのでしょう?それは、インフルエンザを治す時間を短縮するためです。
インフルエンザの治療薬は、ウイルスの増殖を抑える薬です。薬がウイルスの増殖を抑えている間に、既に増えてしまったウイルスを自身の免疫でやっつけて治す、つまり、インフルエンザの治療薬は、闘う相手(ウイルス)を最小限に抑えるための薬なのです。
肝心なのは、ウイルスの増殖が少ないうちに服薬して、闘う相手(ウイルス)をより少なく留めることです。いずれの治療薬も、インフルエンザを発症し、48時間経過してからの服用では効果が著しく落ちてしまいます。そのため、急激な発熱・関節痛など、インフルエンザのような症状が出はじめたら、なるべく早く服薬できるよう医療機関を受診しましょう。
日本で処方されるインフルエンザ治療薬は主に4種類
タミフル - インフルエンザの薬として有名 -
剤型:粉薬 / カプセル剤
服用方法:1日2回(食後)を5日間服用
乳幼児に処方される粉薬は苦みがあるため、アイスクリームやお薬ゼリーなどと一緒に服用するとよいでしょう。
薬価:粉薬 244.0円(5日間で2,450円)カプセル剤 283.0円(5日間で2,850円)対応型:A型およびB型
対象年齢:年齢制限なし
●副作用
下痢・腹痛・吐き気・悪心・発疹などがあげられます。
タミフルと異常行動の関係:
厚生労働省医薬品等安全対策調査会は「タミフル服用の有無にかかわらず、異常行動はインフルエンザ自体に伴い発現する場合がある」と結論づけています。しかし、一方で、「10歳以上の未成年の患者さんには原則として使用を差し控えること」と注意喚起をしています。
現在は、この年代の患者さんには、どうしてもタミフルの利用が必要と医師が判断した場合にのみ処方されます。
●適した症状/患者さん
10歳未満または成人の患者さん。内服薬のため、吸入薬ができない、吸入薬が苦手な患者さんに適しています。
リレンザ - B型インフルエンザへの抵抗力が高い -
剤型:粉末吸入薬
服用方法:1日2回を5日間服用
専用の吸入器から噴出される薬を口から吸って、喉と肺を通じた呼吸器官から治していく「吸入式」の薬です。ウイルスが増殖しやすい気道の粘膜に直接成分が届くため、即効性と効果が期待できます。
薬価:152.9円(5日間で1,550円)
対応型:A型およびB型
B型インフルエンザへの抵抗力が高い
対象年齢:5歳以上
5歳以上が対象ですが、自宅での服用が必要なため、確実に吸入できる患者さんに限ります。上手に吸入できるかは、「インチェック」という簡単な医療器具で調べることができます。
●副作用
主な副作用として下痢、頭痛、発疹、鼻の炎症、鼻血、吐き気などが報告されていますが、リレンザは錠剤と違って体全体に作用しないため、比較的副作用が出にくいと考えられます。
●適した症状/患者さん
B型インフルエンザへの抵抗力が高いため、B型インフルエンザの患者さんに特に有効です。
4種類のインフルエンザ治療薬の中で、1回の治療費が最も低価格です。タミフルのように、年齢での懸念がないため、未成年で吸入薬を問題なく服用できる患者さんにも適しています。
イナビル - 1回の吸入で治療がおわる -
剤型:粉末吸入薬
服用方法:1回服用
1つの容器には、2箇所に粉末薬が充填されています。10歳以上の患者さんは2容器(計4箇所)を1回分、10歳未満の患者さんは1容器(計2箇所)を1回分として吸入するだけで、継続した治療は必要ありません。
イナビルは1回でしっかりと全ての薬を吸入する必要があるため、医師や薬剤師の指導のもと、その場で吸入するケースがほとんどです。特に小さなこどもの場合には、1回で確実に吸入できないこともあるため、医師の判断のもと処方してもらいましょう。
薬価:2,139.9円(10歳以上4,280円、10歳未満2,140円)
対応型:A型およびB型
対象年齢:年齢制限なし
確実に吸入ができる患者さんに限ります
●副作用
下痢、悪心、胃腸炎、蕁麻疹などの副作用が報告されています。イナビルもリレンザ同様、体全体に作用しないため、比較的副作用が出にくいと考えられます。
●適した症状/患者さん
イナビルの特徴は何といっても1回の吸入で治療を完結できることです。確実に吸入薬の服用ができ、服用回数が少ないほうがよい患者さんに適しています。1回の服用で済むため、服用忘れの心配がなく、自己判断で完治する前に服用をやめてしまうようなこともありません。
ラピアクタ - 薬の服用が困難な患者さんのための点滴薬 -
剤型:点滴
服用方法:1回点滴
基本的には1回の投与で治療を完結させますが、症状が重い患者さんの場合は、何日かに分けて投与することもあります。
薬価:6,216円/300mg
対応型:A型およびB型
対象年齢:年齢制限なし
●副作用
成人(15歳以上)の場合は、下痢や蛋白尿などが、小児(15歳未満)の場合は下痢や嘔吐などが報告されています。
●適した症状/患者さん
ラピアクタは点滴です。カプセルを飲んだり粉薬を吸入したりするのが困難な乳幼児や高齢の患者さんに適しています。また、入院治療を必要とするような重症の患者さんに投与することが可能です。
インフルエンザ治療薬まとめ
いかがでしたか?インフルエンザの治療薬は患者さんの年齢や症状、服用の方法などで適した薬が変わります。ご自身の状態に、より有効で適した薬を処方してもらうよう、かかりつけの医師に相談しましょう。
また、インフルエンザにかかったときは、薬の服用に関わらず、異常行動が現れることが報告されています。特に小さなこどもや未成年者の場合は、異常行動による事故を防ぐため、発症から2日間は服薬の有無に関わらず、1人にしないなど、注意深く見守りましょう。
※薬価は2016年11月現在の価格です。