日常生活はじつは「過酷なスポーツ」だった!?慢性的な首・肩・背中の痛み、違和感の対策をスポーツドクターが解説

もしかするとその痛みや違和感は、日常的な体の使い方に問題があるからかもしれません。 鹿島アントラーズチーフドクターで、アントラーズスポーツクリニックの山藤 崇医師に、日常生活という名の「過酷なスポーツ」を乗り切るコツについて解説してもらいました。
医師紹介
Jリーグ・鹿島アントラーズのチームドクターを務める山藤 崇医師を中心に診療を行っています。日本整形外科学会認定の専門医、そして日本スポーツ協会公認スポーツドクターとしての確かな医学的知見をベースに、プロアスリートの身体を長年支え続けてきました。単に痛みに対処するだけでなく、スポーツ医科学の視点から身体の連動性や動作を解析し、一人ひとりに最適な再発防止のアプローチを提案。ジュニア世代からシニアまで、あらゆる世代の「一生動ける体づくり」を専門医の立場から全力でサポートいたします
目次
首や背中の痛みは、「日常的な動作の積み重ね」によって生じる
「マッサージで一時的に楽になっても、数日でまた重くなる……」
そんな慢性的な首・肩・背中の違和感に、多くの方が「体質だから」「年齢のせいだから」と半ば諦めてしまっています。しかし、その痛みは体からの重要なサインです。
私たちが感じる痛みは、いわば氷山の一角です。
首や背中の痛みは単なる「筋肉の疲れ」ではなく、そこに至るまでの「動作の積み重ね」の結果として現れることが多いのです。火事で例えるなら、痛みは火災報知器の警告音です。
音を止める(=一時的に痛みを取る)だけでは、壁の向こうで燃え続ける原因までは解消されません。
そこで私たちが大切にしているのは、アスリートのコンディショニングでも用いられる「動作の連動性」という視点です。
例えば、ピッチャーが「肩の違和感」を訴えたとき、肩だけにアプローチすることはありません。
・股関節の硬さを補うために、肩を振り回していないか?
・体幹の不安定さを、首周りの力みでカバーしていないか?
このように「なぜそこに負担が集中したのか」という背景を深く探ります。
負担の要因を特定し、動きの質を整えなければ、一度落ち着いたとしても、同じ動作を繰り返せば再び同じ場所を痛めてしまうからです。
じつは「過酷なスポーツ」のような日常生活
上記のような考え方は、アスリートに限ったものではありません。それどころか、デスクワークや家事に励む方々にこそ必要です。
たとえば「長時間の座り姿勢」や「前かがみの作業」は、体にとっては一種のハードなスポーツです。首の痛みの要因が、じつは「動かなくなった肩甲骨」や「傾いた骨盤」にあるケースは少なくありません。
土台である骨盤のバランスが崩れれば、その上の背骨のラインに影響し、最終的に首や肩がそのしわ寄せを受けてしまいます。
だから首だけをケアしても、土台が整っていなければ、再び首への負担が積み重なってしまうのです。
セルフチェック!日常生活における「正しい体の使い方」を確認するには

自分の体の使い方に問題があるかどうかを自宅でも簡単にできる方法としては、「姿勢」と「動き」のふたつを確認することが有効です。
まずおすすめなのが、壁を使った姿勢チェックです。
かかと・お尻・背中・後頭部を壁につけて立ち、腰の後ろに手のひら1枚分ほどの隙間があるかを確認してください。
このとき、後頭部が壁につかない場合は首が前に出ている状態(いわゆるストレートネック傾向)、腰の隙間が広すぎる場合は反り腰、逆に隙間がほとんどない場合は猫背の可能性があります。
理想は、耳・肩・腰が一直線に並ぶ姿勢です。
つぎに動きのチェックとして、壁に背中をつけたまま腕を真上に上げてみてください。
腕がスムーズに上がらない、もしくは上げると腰が反ってしまう場合は、肩や背中の柔軟性の低下、あるいは体幹の弱さが考えられます。
また、日常生活のクセも重要な指標です。
長時間のデスクワーク、足を組む習慣、同じ肩にバッグをかける、スマートフォンを見る時間が長いといった習慣がある場合、体の使い方に偏りが生じている可能性が高いと考えられます。
これらの「姿勢」「動き」「習慣」の3つを確認することで、ご自身の体の使い方の問題点はある程度把握できます。
「日常という過酷なスポーツ」に“勝つ”ために改善すべきことは?
日常生活を「無意識に続けている『運動』の連続」と捉えるならば、重要なのは特別なトレーニングではなく、日々の使い方を整えることです。
意識すべきポイントは大きく3つあります。
1つ目は「整えること(姿勢のリセット)」です。
多くの不調は姿勢の崩れから始まります。とくに、頭が前に出る姿勢や骨盤の傾きは、首・肩こりや腰痛の原因になります。座るときは骨盤を立てること、定期的に姿勢を見直すことが重要です。
2つ目は「分散すること(同じ使い方を続けない)」です。
体にとって最も負担になるのは、同じ姿勢や動作を長時間続けることです。30~60分に一度は立ち上がる、体の片側ばかり使わない、スマートフォンは目線の高さで見るなど、負担を分散させる工夫が有効です。
3つ目は「回復すること(こまめに動かす)」です。
疲労は単なる使いすぎではなく、使い方の偏りと回復不足で生じます。肩回しや背伸び、軽いストレッチなどをこまめに取り入れることで、疲労の蓄積を防ぐことができます。激しい運動よりも、日常の中で少しずつ体を動かすことの方が効果的な場合も多いです。
日常生活は、気づかないうちに同じフォームで体に負担をかけ続けている状態とも言えます。姿勢を整え、使い方を分散し、こまめにリセットする。この3つを意識するだけでも、肩こりや腰痛、慢性的な疲労の予防につながります。
特別なことをするよりも、「日常の体の使い方を変える」ことが最も重要です。
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