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日本では「排除状態」なのになぜ感染が拡大?「はしか(麻疹)」とはどんな病気なのか 感染経路・症状・予防について解説

公開日: 2026年03月24日
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「はしか」の感染が拡大しています。各種報道によれば、2026年に入ってから現時点までの感染者数はすでに100名を超えており、これは前年同時期を大きく上回る数とのことです。

感染が広がるはしか(麻疹)ですが、じつは日本では2015年以降「排除状態」にあります。にも関わらず、なぜ感染者が増えているのでしょうか?

この記事では病院なび MediQAで過去に掲載した記事「はしか(麻疹) 【医師監修】どんな症状? 2回の予防接種を受けましょう 感染力はとっても強い!」を再編集のうえ、ご紹介します。

編集:病院なび MediQA編集部

医師紹介

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神津 仁院長
東京都世田谷区若林1-18-10 みかみビル2F
医学博士
日本内科学会認定内科医
日本臨床内科医会認定臨床内科専門医
昭和大学医学部客員教授
東邦大学医学部客員講師

はしか(麻疹)の「排除状態」とは?

「はしか」の正式な病名は「麻疹(ましん)」です。「はしか」の語源は未詳ですが、はしか(麻疹)の発疹の症状が、植物の「芒(はしか・のぎ)」に触れたときに出る赤い発疹と似ていることから「はしか」と呼ばれるようになったとされる説があります。

そんなはしか(麻疹)は、日本では2015年以降「排除状態」であるとされています。「排除状態」とは、日本国内に由来するはしか(麻疹)ウイルスによる感染が3年間確認されていないことを示します。

しかし、これは日本でのはしか(麻疹)の感染者が1人もいないということではありません。

はしか(麻疹)のウイルスが海外から持ち込まれることで、現在でもはしか(麻疹)の感染は毎年発生しています。

感染経路は「空気感染」「飛沫感染」「接触感染」

感染経路は主に「空気感染」「飛沫感染」

はしか(麻疹)は、麻疹ウイルスに感染することによる急性の全身感染症です。

毎年春から初夏にかけて、患者数が多くなります。感染経路は、主に、空気中に含まれるウイルスを吸い込むことによる「空気感染」です。感染している人の咳やくしゃみなどに含まれるウイルスを吸いこむ「飛沫感染」や、手指やもの、食品などについたウイルスが主に口から体内に入る「接触感染」によっても感染します。

麻疹ウイルスは感染力が非常に強く、どんなに広い場所(体育館やコンサートのようなイベント会場など)でも、免疫をもっていなければ、同じ空間にいるだけで感染してしまいます。

例えば、感染力が強いとされているインフルエンザでは、1人の患者から感染するのは、免疫のない1~2人程度とされていますが、はしか(麻疹)は、1人の患者で免疫のない12~14人程度に感染するとされています。

さらに、免疫を持っていない人が麻疹ウイルスに感染すると、非常に高い確率で発症するとされています。周囲に感染させてしまう期間は、発疹の出る数日前から発疹後数日とされているため、この期間は、感染しない / させないように注意しましょう。

はしか(麻疹)の症状、特徴は赤い小さな発疹と高熱

はしか(麻疹)は、麻疹ウイルスに感染してから10~12日間の潜伏期間を経て、熱や咳など風邪のような症状、目の充血の症状などから発症します。

その後、前駆期(カタル期)→発疹期→回復期の経過をたどり、重症化しなければ、症状が現れてから7~10日で回復していきます。

また、後述するとおり妊娠中の感染にはとくに注意が必要です。

経過と症状

【前駆期(カタル期)】 2~4日間

●主な症状

・38℃前後の発熱
・倦怠感
・咳 / くしゃみ
・鼻水
・目の充血 / 目やに
・下痢や腹痛(乳幼児)
・コプリック斑(※)

※コプリック斑は、はしか(麻疹)に特徴的な症状で、発疹の症状が出る1~2日前に現れ、発疹の症状が出て2日を過ぎるころには消えてしまいます。頬の内側の粘膜にできる、1mm程度の小さな白い斑点で、痛みなどはありません。

【発疹期】 3~5日間

●主な症状や経過

・高熱:前駆期の発熱が1℃程度下がったあと、半日ほどで再び高熱(多くの場合39.5℃以上)が出ます。
・発疹:高熱とともに、はしか(麻疹)特有の発疹が以下のような経過で体全体に現れます。この発疹は、痛みはありませんが、場合によってはかゆみをともなうことがあります。

耳の後ろ ・ 首筋 ・ おでこ →(翌日) 顔 ・ 体 ・ 上腕 →(2日後) 手足

【回復期】

・熱が下がる
・風邪のような症状が治まる
・発疹が退色する
・赤い発疹は黒ずんだ色素沈着となり、しばらく残りますが、やがてこれも消えていきます。

免疫力の回復には1ヶ月程度かかることもあるため、他の感染症にかからないように注意しましょう。

はしか(麻疹)感染、妊娠中の人はとくに注意が必要

妊娠中にはしか(麻疹)に感染した場合、以下のような特徴があります。


・重症化しやすい
・風疹のように先天性の奇形などを起こす可能性は低い
・流産や早産、死産を起こす可能性がある


●妊娠を希望している場合
予防接種を受けることを検討しましょう。妊娠を希望している女性やその家族(同居者)は、麻疹・風疹混合ワクチン(MRワクチン)を無料 または 一部助成して受けられる場合があります。詳しくは、お住いの市区町村に問い合わせてみましょう。また、はしか(麻疹)のワクチンは、接種後2ヶ月間は妊娠を避ける(避妊をする)必要があります。接種のタイミングも検討しましょう。

●既に妊娠している場合
予防接種は受けられません。はしか(麻疹)流行時は外出を避ける、人混みに近づかないなど、感染に注意して過ごしましょう。

はしか(麻疹)の予防には「予防接種」が最も効果的!

はしか(麻疹)の予防には「予防接種」が最も効果的!

麻疹ウイルスはとても小さく、感染力も非常に強いため、マスクや手洗いでは完全に予防することはできません。最も有効な予防法は、ワクチンの予防接種で麻疹ウイルスに対する免疫を獲得することです。

はしか(麻疹)の予防接種は、以下のように定期接種の対象になっています。

・ワクチンの種類:麻疹・風疹混合ワクチン(MRワクチン) または 麻疹ワクチン

・接種回数:2回

・対象年齢:
 1回目・・・ 1歳
 2回目・・・ 5歳以上7歳未満 かつ 小学校就学前

●定期接種とは?
国や自治体が接種を強く勧めているワクチンです。対象年齢や接種時期などが定められていて、ほとんどの場合、無料で接種することができます(一部有料の場合もあります)。住民登録をしている市区町村から予診票や予防接種が受けられる医療機関の一覧表などの案内が届きます。各自治体によって、実施方法や注意点は異なります。送られてくる案内をよく読み、期間内に予防接種を受けるようにしましょう。

2回接種が必要な理由とは?

2回接種が必要な理由ですが、国立感染症研究所の説明によれば

(1)1回の接種で免疫がつかなかった子どもたち(数%存在すると考えられており、primary vaccine failure; PVFと呼びます)に免疫を与えること、(2)1回の接種で免疫がついたにもかかわらず、その後の時間の経過とともにその免疫が減衰した子どもたちに再び刺激を与え、免疫を強固なものにすること、(3)1回目に接種しそびれた子どもたちにもう一度、接種のチャンスを与えること

と、されています。しかし、はしか(麻疹)の予防接種が2回の定期接種となったのは2006年度からのこと。それ以前は、任意接種だったり1回接種だったりと、受ける条件や回数が年代によって異なります。現在では2歳以上の年齢の95%以上の人は、はしか(麻疹)の抗体を保有しているとされていますが、自身や家族が予防接種をしているかわからないという場合は、生まれた年をチェックして、予防接種を受けることを検討してみましょう。

●1977年以前生まれの場合
はしか(麻疹)の予防接種は、1966年にはじまりましたが、1978年に定期接種となるまでは任意接種でした。そのため、この年以前に生まれた多くの人は予防接種を受けていないことが考えられます。ただ、この時代は、自然感染ではしか(麻疹)にかかることが多かったため、既に免疫を獲得している可能性もあります。

●1978年から2005年生まれの場合
1978年からはしか(麻疹)の予防接種は定期接種となりました。ただし、現在のように2回の定期接種になったのは2006年以降で、この時代の定期接種は1回のみでした。しかし、なかには追加接種を受けている人もいます。その理由は2007年の流行です。

2007年、10代から20代(1970年代から1990年代生まれ)の間ではしか(麻疹)が全国規模で大流行しました。流行の原因としては「定期接種が未徹底で、一度も予防接種を受けていない」、「はしか(麻疹)の流行が少なくなり、自然感染で免疫を獲得する機会が減った」、「1回の定期接種で十分な免疫がついていない」、「1回の定期接種で免疫はついたものの、麻疹ウイルスに接する機会が減って免疫が強くならなかった」などが考えられるとされています。

そこで、2007年の流行を受け、翌年から5年間、1990年度~1999年度生まれの人には追加接種の機会が設けられたのです。

●2006年以降生まれの場合
2006年からはしか(麻疹)の予防接種は2回の定期接種となりました。

ただし定期接種は強制ではないため、必ず受けているとは限りません。なんらかの理由で受けていない場合もあるため注意しましょう。

はしか(麻疹)にかかったかわからない・予防接種をしているかわからない場合は?

免疫をもっているか、抗体検査を受けることができます。ただ、この検査も自費診療(保険適用外)で、数千円の費用がかかります。その結果、免疫がなく、予防接種を受けるとなった場合は、さらに費用がかかってしまいます。

既に免疫がある状態で、さらに麻疹ワクチンを接種しても健康に悪い影響はないため、同じ費用がかかることであれば、抗体検査をせずに予防接種を受けても問題ありません。

ぜひこの機会に、はしか(麻疹)の予防接種を検討してみてください。

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