寝不足による記憶力低下、「仮眠」以外にも対策があった…?54人の実験で判明した「20分間の習慣」

54人を30時間断眠させ、運動・仮眠・何もしないで比較
研究チームは、健康な若年成人54人を対象に、実験室内で30時間にわたり眠らせない状態を作りました。参加者は、「20分間の中強度〜高強度の自転車運動を行う」、「90分間の仮眠を取る」、「どちらも行わない」という3つのグループに分けられ、介入の直後に画像を用いた記憶課題に取り組みました。
その3日後に同じ記憶課題の成績を測定したところ、「運動」「仮眠」グループはいずれも、「どちらも行わない」」グループに比べて成績が約22%高いことが分かりました。
仮眠は脳の「充電」、運動は「効率化」で記憶を守る
研究チームが脳波を測定したところ、運動と仮眠では記憶を守る仕組みが異なることも示されました。
仮眠は脳を休ませて機能を回復させる働きがあった一方、運動は疲労を増やすことなく、脳の情報処理の効率を高める形で記憶の定着を助けていたといいます。
責任著者のMarc Roig氏は「短時間の運動でも、私たちにとって重要な認知能力のひとつを守ることができる」と述べています。
筆頭著者のMadhura Lotlikar氏も「運動は手軽で費用もかからず、取り入れやすい対策だ」と指摘し、職場での疲労対策としても活用できる可能性があるとしています。
なお、今回の運動は、心拍数がやや上がる程度の軽いジョギングやサイクリングに相当する強度で、特別な器具や場所を必要としないものでした。
研究チームは、通勤前や休憩時間などの隙間時間に取り入れやすい強度・時間であることも、実践のしやすさにつながると説明しています。
寝不足への応急的な対処法になるか
徹夜や寝不足は避けられない場面もありますが、今回の結果は、そうした状況でも打つ手があることを示しています。
ただし今回の対象は健康な若年成人54人と規模が限られており、中高年層や、一晩に限らず慢性的な睡眠不足が続いている場合にも同様の効果があるかどうかは、今後さらに大規模な研究で確認する必要があります。あくまで一時的な寝不足への応急的な対処法として、参考にするのがよいかもしれません。
【出典】
カナダ・マギル大学. "Protecting episodic memory after sleep loss: Similar benefits of exercise and naps via distinct neural contributions." Proceedings of the National Academy of Sciences (PNAS). 2026年8月24日発表。
■執筆:鈴木 博子(すずき ひろこ)
ライター・編集者。早稲田大学政治経済学部卒。医療・健康分野を中心に、医師や医療従事者へのインタビュー記事、専門家監修記事、書籍などを手がける。これまでに医療従事者を1,500人以上取材し、Web記事3,000本以上、書籍約30冊を執筆。企画、取材、構成、執筆、編集まで一括して対応する。現在は埼玉県と長野県で二拠点生活を送りながら、定期的にインドを訪れ、ヨガとアーユルヴェーダの学びを深めている。
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