第3回新型コロナウイルス感染症に関する調査『長期化が予想される新型コロナウイルス感染症。 5割の医療機関は経営支援が必要か』 臨床医師528名に調査を実施
新型コロナウイルスの新規感染者数は減少に転じ、緊急事態宣言も2020年5月25日に全ての都道府県で解除されました。しかしながら、感染流行の第二波、第三波に備えた対策を継続していくことが必要とされています。
今後の新型コロナウイルスの流行や生活の再建について、現場の臨床医師は何を考えているのか。また、医療機関の感染対策、患者の受診状況、経営への影響はどのようになっているのか。
目次
第3回新型コロナウイルス感染症に関する調査の概要
調査目的
3月、4月に行った調査結果と比較するかたちで、診療現場で働く医師の実感を掴み、医療機関の対応状況、医療資材の不足状況、医師の意識の変化を見る。
調査概要
当社サービスにご協力をいただく医師とのコミュニケーションサービス"Doctors Square"登録会員医師で、3月の第1回アンケートに回答のあった817名を対象に実施しました。
1. 調査対象
Doctors Square登録会員医師のうち、2020年3月の第1回アンケート調査に参加した方
2. 調査方法
インターネットアンケート
3. 調査期間
2020年5月20日(水)~25日(月)
4. 有効回答者数
528名(対配信数:65%)
5. 配信対象者の属性
病院勤務医及び診療所勤務医
6. 主な調査内容
- 新型コロナウイルスの収束時期、以前の生活に戻るために必要なこと
- スタッフの充足状況、疲弊状況、医療崩壊危機回避についての考え
- 来院患者数の変化、患者からの問い合わせ状況
- 感染の疑いのある患者の診察件数、検査状況
- 必要な備品・資材、情報の充足状況
- 国の拡大防止策、期待する治療薬について
- 電話やオンライン診療の実施状況、予定 など
調査結果
- 医療現場の備えは改善傾向にあるが、検査を行えないケースが未だ過半数を占める
- 感染流行は長期化を覚悟。『診察』、『治療』、そして『予防』を着実に実施できる環境が必要
- 長期化は、医療を支える医療機関の経営にも深刻な影響。半数が経済的支援を求める
- 費用や診療報酬の低さのため、オンライン診療の実施は約3割に留まる
※これらは調査結果の一部です。その他の結果は、以下にて公開しています。
また、過去の調査結果はこちらから
調査結果の詳細
1. 医療現場の備えは改善傾向にあるが、検査を行えないケースが未だ過半数を占める
医療物資や情報、院内感染対策、検査の実施状況など、医療現場の備えや対応はどのようになっているのか、3月以来、継続的に調査してきました。
まず、必要な資材の充足状況では、「全く足りていない」及び「あまり足りていない」の回答合計は、8割近くに達していた4月調査から18ポイント減少し、6割となりました。医療資材の確保はやや改善してきているものの、マスクや防護服、消毒用製品などは、まだ過半数が不足していると回答しています。(図1)
資材充足状況がやや改善されてきたこともあってか、勤務先医療機関の院内感染対策についても「よく出来ている」または「まあ出来ている」との回答が、3月調査、4月調査の4割台から10ポイント以上上昇し、58%となりました。情報の入手についても、「十分だと思う」または「まあ十分だと思う」との回答が45%となり、4月以前に比べ10ポイントあまり上昇しています。(図2)
感染疑い患者の検査については、検査が必要と判断した医師のうち、「全て検査を行った」と回答したのは45%でした。3月調査(3月1日以降、3月調査回答時点まで)より7ポイント、4月調査(3月調査回答時点以降、4月調査回答時点まで)より10ポイント高い結果となりました。検査を行えなかった割合も「6割くらい」以上が減少するなど、検査が少しずつできるようになってきた状況が窺えます。(図3)
2. 感染流行は長期化を覚悟。『診察』、『治療』、そして『予防』を着実に実施できる環境が必要
まだ不十分とはいえ、医療・検査体制に改善傾向が見られるなか、臨床現場の医師は感染の収束時期についてどのように考えているのでしょうか。
3月調査で最も多かったのは「今年の夏ごろ」、4月調査では「1年くらい(2021年春ごろ)」でしたが、今回の調査ではさらに長期化すると考える医師が増加。「2~3年かかるのではないか」との回答が約3割を占め、最頻回答となりました。(図4)
現場の医師は新型コロナウイルスとの戦いが長期戦になることを覚悟してきているようです。
さらに、感染の流行が終わる、即ち「感染拡大以前の生活に戻るためには何が必要なのか」を医師に問いました。(図5)
最も多く選択されたのは「ワクチン」「治療薬」で8割前後、次いで「安全・簡単に検査ができること」「集団免疫状態」も過半数が選択する結果となりました。現場の医師が、何よりも新型コロナウイルス感染症を的確に診断(検査)し、患者を治せる薬を切実に求めていること、また、「ワクチン」や「集団免疫状態」による感染拡大の予防を重要と考えていることが分かります。
3. 長期化は、医療を支える医療機関の経営にも深刻な影響。半数が経済的支援を求める
感染の長期化を念頭に置いた場合、医療の安定的な供給が必要です。その為には、医療現場の課題を最優先で解決していく必要がありますが、今、医療現場ではどのような問題が起きているのでしょうか。「医療現場で困っていること」を聞きました(図6,7)
3月調査時、4月調査時に比べて「医療用物資の不足」「恐怖や不安」「検査ができない」といった声が軒並み減少する一方で、唯一「来院数が減っている」は13ポイント増加し、35%となりました。診療所・小規模病院勤務医では、その割合は半数近い47%にものぼります。
この患者の受診控えによって生じる「医療機関経営への影響」として何が起きているのか、具体例を挙げて聞きました。
その結果が図8です。医療者不足が叫ばれているにも関わらず、診療所・小規模病院の勤務医では、「勤務時間の削減」が14%、「給与の削減がされた」も12%から挙がっています。「一時的な休院(休診)をしている」及び「検討している」を合わせると8%となるなど、感染拡大は一部の医療機関の経営にも深刻な影響を及ぼしているようです。(図8)
では、医師が「政府や行政」に求める対策は何か。医療物資や治療薬・ワクチン、検査体制などと並んで、「医療機関や医療従事者への経済的支援」を回答者全体の半数近くが挙げました。診療所・小規模病院勤務医では顕著で、その割合は50%に達しています。(図9)
今後も続くであろう、新型コロナウイルス感染症との長い戦いの最前線、また最後の砦となるのが医療機関であり、医療従事者です。私たちの命を守る医療体制を維持するためにも、今、医療機関を支える手厚いサポートが必要なのではないでしょうか。
4. 費用や診療報酬の低さのため、オンライン診療の実施は約3割に留まる
流行が続くなか、政府は初診受付からオンライン診療ができるように時限的措置を取りました。しかし、オンライン専用システムを利用して「既に実施している」のは僅かに3%で、電話利用を合わせても約3割に留まります。診療所や小規模病院では、オンライン専用システム2%、電話も19%と、さらに低くなっています。
実施しない理由としては、「費用がない」「費用対効果が少ない」といった声が上がっています。(図10)
オンライン診療は、患者さんの利便性だけではなく、医療従事者と患者さん双方の院内感染を防ぐ役割が期待されています。新型コロナウイルスの長期化を見据え、インフラへの助成、診療報酬の見直しなどで、オンライン診療を健全に運用していける方法を模索しつつ、強く後押しすることが、いま私たちに求められているのかもしれません。
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