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インフルエンザ予防接種 【医師監修】 効果は「感染防止」ではなく「重症化を防ぐ」予防に最も効果的

公開日: 2016-11-29
更新日: 2021-09-21
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インフルエンザの予防接種で使われるワクチンには、感染を抑える働きがないということはご存じでしょうか?
ではなぜインフルエンザの予防接種は推奨されているのでしょう?インフルエンザ予防接種の効果や効果的な接種時期について詳しく解説していきます。

医師紹介

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菅原 正弘院長
東京都練馬区石神井町3-9-16
医学博士
日本内科学会評議員
日本リウマチ学会評議員・専門医
日本糖尿病学会学術評議員・専門医
日本消化器内視鏡学会専門医

昨シーズン(2020/2021)の季節性インフルエンザワクチンと流行状況

昨シーズン(2020/2021)は、季節性インフルエンザと新型コロナウイルス感染症との同時流行が懸念されたことから、インフルエンザワクチンの需要が高まりました。そのため、統計をとりはじめた1996年以降で、ワクチンの供給量は過去2番目、使用量では過去最大となりました。

しかしながら、実際の感染者数については、例年の1,000分の1程度に留まり、シーズンを通して流行入りをすることはありませんでした。調査がはじまった1999年以降、季節性インフルエンザが流行しなかったのは、2020/2021シーズンがはじめてでした。

■ 参考資料
厚生労働省 : 2021/22シーズンのインフルエンザワクチンの供給等について
厚生労働省 : インフルエンザの発生状況

今シーズン(2021/2022)のインフルエンザワクチン接種

今シーズン(2021/2022)のワクチン供給量は、コロナ禍以前と同程度になる見込みであると厚生労働省より発表されています。昨シーズンの供給量、使用量と比較すると少なくなるものの、不足する可能性が生じた場合は、安定供給のために何らかの対策がとられることが考えられるので、過度な心配はせずに例年通りに行動しましょう。

また今シーズンは、ワクチンが供給されるタイミングが昨シーズンより遅れることも発表されています。そのため、接種が開始される10月中は一時的に不足しているような状態になる可能性も考えられます。しかし、11月以降も継続して供給されるため、こちらも過度な心配は必要ないでしょう。

健康な大人であれば、接種が11月以降になっても流行のピークに十分に間に合うので、特に急いで接種する必要はありません。10月中は、2回接種をしないと十分な効果が得られない13歳未満の子ども(特に乳幼児)や免疫機能の低下している妊婦、高齢者などが優先される可能性があります。

■ 参考資料
厚生労働省 : 季節性インフルエンザワクチンの供給について

インフルエンザワクチンの働き

1.「発症」を抑える

前述の通り、インフルエンザのワクチンには、感染を抑える働きはありません
「感染」とは、インフルエンザウイルスが口や鼻から体内に入り、体の中で細胞に侵入して増殖することをいいます。感染しているだけの状態では、ほとんど自覚症状はありません。

「感染」してから数日の潜伏期間の後、発熱や関節痛、のどの痛みといったインフルエンザの症状が現れます。症状の重さに関わらず、少しでも症状が出た状態を「発症」といいます。

インフルエンザワクチンには、この発症を抑える効果が認められています。

2.「重症化」を防ぐ

インフルエンザに感染して発症しても、多くの人は1週間程度で回復します。しかし、中には肺炎やインフルエンザ脳症などの重い合併症があらわれて、入院が必要になったり、死亡したりするケースもあります。
特に幼児はインフルエンザ脳症にかかる危険性が高く、基礎疾患のある人や高齢者は重症化する可能性が高いと考えられています。

インフルエンザワクチンの最も大きな効果は、このような重症化を防ぐ効果です。また、発症しても軽い症状で留める効果も期待できます。
厚生労働省は、インフルエンザワクチンの効果について、「65歳以上の健常な高齢者については約45%の発病を阻止し、約80%の死亡を阻止する効果があった」と公表しています。

ただし、インフルエンザワクチンの効果の度合いは人によってさまざまです。その理由としては、ワクチンの効果は、年齢や、その人がもっている免疫力、今までかかったことのあるインフルエンザウイルスの種類、過去に接種したインフルエンザワクチンの回数や種類、さらには、その年のワクチンの種類や、その年に流行するウイルスの種類など、さまざまな要素に影響されるためです。

このように、いずれの効果も100%ではないものの、インフルエンザワクチンは、接種すればある程度の発症を抑える効果があり、また発症しても症状が重くなることを防ぐ効果があります。
「世界保健機関(WHO)」でも、ワクチンの接種は有効なインフルエンザの予防手段であると認められています。

インフルエンザワクチンの効果的な接種時期

ルーペから覗くカレンダー

インフルエンザワクチンの予防効果が期待できるのは、接種した2週間後から5カ月後程度までと考えられています。

日本では、例年12月から3月頃が流行シーズンで、1月~2月に流行のピークを迎えます。この期間には予防効果が出るように接種しておくのがおすすめです。

具体的には、予防効果が現れるのに2週間程度が必要なことから、11月中旬頃までに接種しておくと安心ですね。流行のピークに間に合わせるには、12月中旬頃までには接種しておく必要があります。

2回接種は必要か

インフルエンザワクチンは、生後6か月の赤ちゃんから接種できますが、13歳未満は2回の接種が必要です。それは、子供の場合、1回の接種では十分な免疫がつきづらく、必要な免疫を確実につけるため、13歳未満は2回接種とされています。
また、13歳以上でも、基礎疾患のある人や、著しく免疫が抑制されているときは、医師の判断で2回接種となる場合があります。

そのような特別な理由がなければ、13歳以上の成人に対しては1回の接種でよいと考えられていますが、過去にインフルエンザに一度もかかったことがない場合や、過去に一度もインフルエンザの予防接種を受けたことがない場合は、2回接種をするとより高い予防効果を得られることがあります。

どうしてもインフルエンザにかかりたくない受験生や、体力的に不安がある高齢者、喘息などの持病があり重症化が心配な場合などは、接種回数をかかりつけ医に相談してみましょう。その際は、最近のインフルエンザ罹患状況、ワクチンの接種回数や時期、現在の体調などを十分伝えましょう。

2回接種の場合の効果的な間隔と接種時期

1回目と2回目の接種間隔は、原則として13歳未満は2~4週間、13歳以上は1~4週間ですが、いずれの年齢層でも、3~4週間程度の間隔をあけて接種した方が免疫の獲得は良く、ワクチンの効果をより高められると言われています。

さらに、十分な予防効果が現れるのには、2回目の接種から2週間程度必要なことから、1回目を10月中旬に接種し、2回目を11月中旬頃までに接種しておくと効果的かつ流行シーズンに間に合うので安心ですね。

流行のピークに間に合わせるには、1回目を11月中旬頃、2回目を12月中旬頃までには接種しておく必要があります。

インフルエンザ予防接種の価格が医療機関によって違う理由

計算機と家のミニチュア

インフルエンザの予防接種は自由診療(保険適用外)です。そのため、各医療機関で金額を設定することができます。

2015年にインフルエンザワクチンの仕入れ価格が上昇した影響で、その年は値上げをした医療機関が多く見られましたが、以降に大きな変動はなく、多くの医療機関は3,000円から4,000円の間で設定しているようです。

13歳未満の未成年に対しては2回接種が必要なため、2回目の接種価格を低く設定するなど、費用負担を軽減する対応を行う医療機関もあるようです。

また、市区町村によっては費用が助成される場合があります。詳しくはお住いの市区町村に問い合わせてみましょう。

インフルエンザ予防接種まとめ

注射針からしたたる薬剤

インフルエンザワクチンは、そのシーズンに流行が予測されるウイルスに合わせて製造されています。そのため、インフルエンザのワクチンは毎年接種したほうが効果的と考えられています。

そして、インフルエンザ予防接種の効果にはもうひとつ、感染の拡大を抑えるという側面もあります。感染を広げないためにも、ご紹介した効果的な接種時期などを参考に、インフルエンザ予防接種を受けましょう。

■ 参考サイト
厚生労働省 : インフルエンザQ&A

インフルエンザで気になる症状がある場合は、近くの病院に相談しましょう

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※当コラムは東京内科医会のご協力によって作成されています。

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