病院・薬局検索の病院なび

睡眠時無呼吸症候群:【医師監修】いびきだけじゃない!こんな症状はありませんか?

公開日: 2013-09-02
更新日: 2015-08-01
アイキャッチ画像
家族によくいびきをかいていると言われる、日中に襲ってくる強い眠気のために仕事に集中できない。こんな症状があてはまる人は、もしかしたら「睡眠時無呼吸症候群」かもしれません。

医師紹介

若井 安理の画像
若井 安理院長
東京都練馬区大泉学園町7-15-16 ハナブサ第一ビル3F
日本内科学会認定医・総合内科専門医・評議員
日本呼吸器学会専門医・指導医
日本抗加齢医学会専門医
日本糖尿病協会登録医
東京女子医科大学第一内科非常勤講師
東京内科医会理事

睡眠時無呼吸症候群とは?

睡眠時無呼吸症候群(=SAS)とはその名が示す通り、睡眠中に呼吸が停止する状態が何度も繰り返される病気です。一般的には10秒以上の呼吸停止が睡眠1時間当たり5回以上あり、日中の眠気などの症状がみられるとSASと診断されます(注)

本来、睡眠は日中活動した脳と身体を十分に休息させるためのもの。その最中に呼吸停止が繰り返されることで、身体の中の酸素が減っていきます。すると、その酸素不足を補おうと、身体は心拍数を上げます。寝ている本人は気付いていなくても、寝ている間中脳や身体には大きな負担がかかっているのです。脳も身体も断続的に覚醒した状態になるので、これでは休息どころではありません。

その結果、強い眠気や倦怠感、集中力低下などが引き起こされ、日中の様々な活動に影響が生じてきます。

睡眠障害の一種ですが、生活習慣病とも深い関わりがあり、心筋梗塞や脳梗塞といった循環器系の病気の原因になることも。「いびきくらいで大げさな」などと軽く考えず、専門医に相談して適切な治療を受けることが大切です。

(注)SASの正式な医学的定義は、「10秒以上続く無呼吸もしくは低呼吸が、一晩(7時間)の睡眠中に30回以上、もしくは睡眠1時間に平均5回以上認められ、かつその一部は、健康な人では最も規則正しい呼吸が観察できるノンレム睡眠と呼ばれる睡眠中にも認める場合」。

どうして呼吸がとまるの?

SAS患者のほとんどは、空気の通り道である気道がなんらかの理由でふさがってしまうことによって起こる、「閉塞型(へいそくがた)睡眠時無呼吸症候群(OSAS)」と呼ばれるタイプに該当します。男性での発症が圧倒的に多く、とくに肥満傾向にある男性は要注意。首や喉の周りの脂肪が増えると気道が狭くなり、SAS発症の可能性はぐんと高くなります。

一方、女性も閉経後は発症しやすくなることがわかっています。これは閉経によって、呼吸の促進作用を持つプロゲステロン(黄体ホルモン=女性ホルモンの一種)の分泌量が低下するためと考えられています。

どんな症状があるの?

寝る男性の鼻をつまむ女性

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の代表的な症状をご紹介します。 自覚症状の感じ方や程度には個人差がありますから、可能であれば寝ている間のことについてぜひご家族やパートナーにきいてみてください。 「ちょっと疲れているだけ」、「いつものこと」で終わらせず、日常生活を振り返ってみましょう。

いびきだけじゃない!こんな症状はありませんか?

○寝ている間

いびきをかく

いびきが止まり、大きな呼吸とともに再びいびきをかきはじめる

呼吸が止まる

呼吸が乱れる、息苦しさを感じる

むせる

何度も目が覚める(お手洗いに起きる)

寝汗をかく


○起きたとき

口が渇いている

頭が痛い、ズキズキする

熟睡感がない

すっきり起きられない

身体が重いと感じる


○起きているとき

強い眠気がある

だるさ、倦怠感がある

集中力が続かない

いつも疲労感がある

生活習慣病との関係は?

呼吸をする時、人は空気中の酸素を肺に取り込み、二酸化炭素を排出します。無呼吸状態ではこの換気ができなくなることから、血液中の酸素量低下と二酸化炭素の蓄積が起こり、血管や臓器に深刻なダメージを与えます。そのためSASの人はそうでない人に比べて、高血圧、糖尿病、脂質異常症(高脂血症)などの生活習慣病や、脳梗塞、脳出血、心筋梗塞といった命に関わる病気の発症率が高いことがわかっています。

検査と診断

問診の結果SASの可能性が疑われる場合には、具体的な検査へと進みます。専門施設で入院検査をする場合もありますが、自宅で普段通りに寝ながらできる検査から始めるケースがほとんどです。仕事や日常生活に支障を来たさずに検査を受けることができます。

どんな治療をするの?

口を開けて寝る男性

治療方法には、症状を緩和させるもの(対症療法)と、根本的にSASの原因を取り除くもの(根治療法)とがあり、いずれも個々の患者さんの状態に合わせて最適な治療方法が選択されます。一概にどの治療方法が優れているということはなく、重症度や原因に応じた治療方法が適用されます。

生活習慣の改善指導

閉塞型睡眠時無呼吸症候群の患者は肥満に加え、生活習慣病を合併しているケースが多いことから、減量を目的とした食事療法や運動療法を行います。肥満が解消されれば気道が広がってSASが改善されるだけでなく、生活習慣病のリスクの低減も期待できます。

内科的治療

内科的治療の代表例がCPAP(シーパップ)療法です。具体的には睡眠中に鼻マスクを装着し、鼻から一定の圧力をかけた空気を気道に送り込むことで、気道がふさがるのを防ぐ治療法です。中等度から重症のSAS患者にとっては非常に有効な治療法で、一晩で劇的な改善がみられるケースもあるようです。

歯科装具(マウスピース)

睡眠時に下顎を数ミリ前方に出した形で固定するマウスピースを装着することで、気道を確保し、無呼吸の発生を防ぐ治療法です。軽症から一部の中等度の患者には有効ですが、重症者では十分な効果が期待できないため、CPAP療法が第一選択となります。

外科的治療

とくに小児の閉塞型睡眠時無呼吸症候群では、気道をふさぐ原因が扁桃やアデノイド(鼻と喉の間にあるリンパ組織の集まり)の肥大であることが多く、その場合はそれらを切除する手術を行います。

日常生活で注意することは?

肥満に気をつけることはもちろん、就寝前の飲酒や睡眠薬の服用、喫煙習慣はいびきや無呼吸を悪化させるリスクがあるので避けましょう。また、睡眠時の姿勢は仰向けよりも、横向きのうほうが気道のふさがりを防止することができます。

SASは、放っておいても自然な改善は見込めません。いびきや日中の眠気が気になる方は、内科のかかりつけの医師や、呼吸器内科、耳鼻いんこう科の医師に早めに相談しましょう。

いびき・睡眠時無呼吸症候群で気になる症状がある場合は、近くの病院に相談しましょう

を探す