「関節リウマチ」の症状・治療・合併症:【医師監修】発症のピークは30代~40代
医師紹介
目次
リウマチの患者さんは現在日本に70万~100万人いるといわれていて、そして毎年約1万5000人が発病すると考えられています。リウマチというとお年寄りの病気と思われがちですが、関節リウマチの発症のピークは30~40歳代です。そのうち8割が女性の患者さんで、圧倒的に女性に多くみられる病気ですが、なぜ女性に多いのかはっきりしたことはまだわかっていません。60歳代からの発症も多く、この場合を「高齢発症関節リウマチ」と呼んでいます。高齢発症関節リウマチでは、男女の発症率に差はありません 。
関節リウマチの原因
原因は私たちの体の免疫反応が正しく働かなくなり、自分自身を攻撃してしまう、いわゆる自己免疫性疾患です。 本来、免疫は外部から体内に侵入してきた細菌やウイルスなどを攻撃して、それらを排除する働きを担っています。しかし、免疫に異常が生じると、誤って自分自身の細胞や組織を攻撃してしまいます。それにより炎症が起こり、関節の腫れや痛みとなってあらわれてきます。 炎症が続くと、関節の周囲を取り囲んでいる滑膜が腫れ上がり、さらに炎症が悪化して、骨や軟骨を破壊していきます。
関節リウマチの症状:初期のシグナルは「こわばり」と「関節の腫れ」
関節リウマチは、いきなり激しい症状が出る病気ではありません。 ごく初期は、食欲がない、だるい、熱っぽい、体重が減るなどといった漠然とした症状があらわれます。しかしこのような症状は、単なる疲れや風邪のためだろうと勘違いしてしまうことが多いのが現状で、この段階で関節リウマチに気づくのは困難です。 初期のシグナルとして気を配りたいのは、「こわばり」と「関節の腫れ」です。
初期症状(1):「朝のこわばり」
「こわばり」は、関節リウマチの代表的な初期症状のひとつです。朝、起き上がるときにあらわれやすく、「朝のこわばり」と呼ばれます。眠っている間に炎症によって体液がたまり、むくむために症状がでると考えられています。手足が動かしにくくぎこちない、手がにぎりにくい、手足が動かしにくくぎこちない、関節が自由に曲げ伸ばしできないなど人によって感じ方はさまざまです。
炎症が軽い場合は、「こわばり」は体を動かしているうちに、徐々に消えていきますが、ひどくなると午前中いっぱい、さらには一日目じゅうつづくこともあります。目安としては、「こわばり」が15分から1時間もつづく場合は、関節リウマチの可能性が高いと考えられます。
初期症状(2):指の関節の「腫れ」
多くの場合、「腫れ」は、初めは指の関節に出ます。指先から数えて2つ目の第2関節と、つけ根の第3関節が腫れるのが初期の典型的な症状です。腫れている部分は赤みを帯び、熱をもって、痛みを生じます。
関節リウマチの腫れは、手の指や手首、足の指など小さな関節から始まり、しだいに足首、ひざ、ひじ、肩、股関節など四肢の大きな関節が腫れてきます。
そして、この「腫れ」や関節痛は、左右対称性(右手が痛い場合は、左手も痛くなる)になって現れることも関節リウマチの特徴的な症状の一つです。ただし、左手の小指だけ、左膝だけといように「単関節型」と呼ばれる症状を訴える人も少なくありません。
●病気が進行すると関節が破壊される
関節で炎症が続くと、関節の中にある「滑膜(かつまく)」に血管や細胞が増えて、滑膜が厚く腫れてしまいます。腫れあがった滑膜はやがて骨の軟骨部分や靱帯(じんたい)を破壊し、さらに進行すると骨まで破壊して動かなくなってしまいます。
関節リウマチは合併症を伴いやすい。特に「貧血」と「骨粗しょう症」には要注意!
関節リウマチは関節に炎症が起きるだけの病気ではなく、肺、腎臓、胃、皮膚、神経、貧血などさまざまな内臓に合併症を伴いやすい全身性の病気です。
主な合併症には、以下のようなものがあります。
●貧血
血液中の赤血球や血色素が減少した状態で、めまいなどを起こします。リウマチの患者さんの多くが貧血です。それは、長い間炎症が続くために、体の中で赤血球をうまく作れなくなっていたり、薬の副作用による胃炎や胃潰瘍があったり、少しづつ出血していたりすることが原因といわれています。
●骨粗しょう症
鬆(す)が入ったように骨の中がスカスカの状態になり、骨がもろくなる病気です。 関節に炎症があるため、関節の骨密度が下がったり、関節だけでなく全身の骨密度も下がったりすることがあります。これは、関節が痛いために運動不足になることや炎症を起こす物質の作用によるものです。 また、関節の治療薬として、経口ステロイド剤を服用すると、その副作用で骨粗しょう症にかかりやすくなるといわれています。
●心膜炎
心臓を覆っている膜に細菌やウイルスが入り炎症を起こす病気です。心膜炎にかかると、胸の痛みと熱に悩まされます。重症化すると非常に厄介ですから、早めに治療を受けましょう。
●間質性肺炎(かんしつせいはいえん)
肺が硬くなったり縮んだりする病気です。最悪の場合、死に至る事もあります。間質性肺炎は、肺がんを合併する事もある為、しっかりと治療に専念してください。
●シェーグレン症候群
涙腺や唾液腺に炎症がおきて、涙や唾液が出にくくなります。
など、リウマチの合併症はたくさんあります。いずれにしても、合併症を早期に発見して、治療するために、定期的な診察と検査を受けることが重要です。
関節リウマチの治療法:治療の目標は症状をコントロールして、それを維持していくこと
関節リウマチでは炎症が起こっても、いきなり関節が破壊されたり、変形したりするわけではありません。 関節に傷がつくのは、発病後1~2年で始まるといわれていて、5~10年で変形が起こります。関節が破壊されて、変形が起こる前の早期に病気を見つけ、治療することがとても重要になります。
治療を早期に始めることで、「治ったように症状が治まる」状態に導くことが可能で、それを維持していくこともできます。そのための治療の基本は、病気の進行状態や症状に合わせ、3つの治療法を組み合わせて行います。
●薬物療法
病気に直接働きかけ関節破壊を防いだり、炎症や痛みを抑えたりする方法です。 薬は、非ステロイド性抗炎症薬、副腎皮質ステロイド薬(ステロイド薬)、抗リウマチ薬の3種類に大別されます。現在では、関節リウマチという診断が確定したら、なるべく早期から積極的に、関節破壊を抑える効果のある抗リウマチ薬を使うことが推奨されています。
●リハビリテーション療法
関節を保護し、機能を維持することが目的の治療法です。 リハビリテーションには、物理療法、運動療法、作業・装具療法などがあります。関節の痛みをやわらげながら動かしていく方法を身につけることで、機能の低下を防ぎ、日常生活の質を維持することにも役立ちます。
●手術療法
病気が進行して関節が破壊され、うまく機能しなくなった場合に、失われた機能を回復させることが目的で行います。 手術方法は主に2つあります。ひとつは、関節の痛みやはれをやわらげる「滑膜切除術」。もうひとつは、破壊された関節の機能を回復させる、機能再建のための「人工関節置換術」です。
日常生活で気をつけたいこと
関節リウマチの人は、関節に負担をかけない動き方を身につけることが大切です。関節にかかる負担を少なくすることで、痛みが軽くなり、変形を防ぐことができます。 また、関節リウマチの人は、上記の通り骨粗しょう症や貧血を合併しやすくなります。これを予防する栄養素を食事からとるようにすることも重要です。
●骨粗しょう症予防の食事
骨を丈夫に保つためには、カルシウムを含む食べ物をとることが大切です。カルシウムを多く含む食品は、牛乳や乳製品、小魚、小松菜などの緑黄色野菜です。さらに、カルシウムの吸収率を上げるには、たんぱく質やビタミンDを含む食品といっしょに調理すると吸収がよくなります。
●貧血予防の食事
食品貧血予防には、鉄を含む食品を食べることでよい効果を上げます。鉄にはヘム鉄と非ヘム鉄とがあり、体内吸収率はヘム鉄が約15~25%なのにくらべ、非ヘム鉄は約2~5%と低くなります。ただし非ヘム鉄も、ビタミンCや動物性たんばく質といっしょにとることで、吸収率が高くなります。ヘム鉄を多く含む食品は、肉の内臓(レバー)や魚の赤身などです。非ヘム鉄を多く含むのは、ひじきや大豆製品など植物性食品です。
関節リウマチが疑われる場合には早期に受診・治療を行いましょう
関節リウマチは、関節が破壊され、変形して動かなくなってしまう病気です。早期に発見して適切な治療を行えば、症状をコントロールして関節破壊が進行するのを防ぐことができます。関節リウマチではないかと思ったら、早めにリウマチ専門医の診察を受けましょう。
※当コラムは東京内科医会のご協力によって作成されています。
東京内科医会は、常に最新の医学知識を学び、最良の医療を実践する魅力を持った何かを主体に、診療を行っている医師の集まりです。