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肺血栓塞栓症(エコノミークラス症候群)の原因・症状・治療法と予防のポイントを解説

公開日: 2024-04-04

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宇井 進 医師
神奈川県横浜市

肺血栓塞栓症(エコノミークラス症候群)とは

下半身から心臓へ血液を戻す血管内(静脈)で血栓(血の塊)が生じ、それが血流に乗って流され、肺の血管(肺動脈)に詰まって起こる疾患です。ほとんどの場合、血栓は脚 もしくは 骨盤内で発生します。飛行機のエコノミークラスのような狭い空間で同じ姿勢を取り続けることでも起こりやすいことから、エコノミークラス症候群とも呼ばれます。

原因

主に、脚や骨盤内の下半身の血管内にできた血栓(血の塊)が、血流に乗って流され、肺の血管に詰まることで起こります。この血栓ができる3大要因として「脚の血流が悪くなる(血液のうっ滞)」「血管の状態が悪くなる(血管内皮障害)」「血液が固まりやすくなる」ことがあげられます。具体的には、以下のようなことがリスク要因となります。

〇 主なリスク要因

  • 長期間寝たままの状態
  • 肥満
  • 妊娠
  • 加齢
  • 長時間座ったままの状態
  • 手術
  • 外傷や骨折
  • 喫煙
  • 薬物(経口避妊薬、女性ホルモン薬など)
  • 脱水

など

症状

症状がない場合もありますが、進行すると、主に以下のような症状があらわれます。重症の場合は、血圧が急激に下がり、意識障害などを起こすショック状態や突然死に至る可能性があります。
 
〇 主な症状

  • 呼吸困難
  • 胸の痛み
  • 早い呼吸(頻呼吸)
  • 発熱
  • 失神
  • 血の混じった痰(血痰)
  • 動悸
  • 音(ゼイゼイ、ヒューヒュー)が鳴る呼吸(喘鳴)
  • 冷や汗
  • 不安感

など

検査・診断

症状や血圧、脈拍、体内の酸素濃度などから肺血栓塞栓症が疑われる場合は、胸部のレントゲン検査や心電図検査、血液検査、心臓や脚の超音波(エコー)検査などを行います。さらに確定診断のためには、CT検査などの画像検査を行います。

治療・治療後の注意

治療の中心は「薬物治療」です。症状にあわせて、「カテーテル治療」「外科的治療」を行う場合もあります。

薬物治療

血栓ができるのを防ぐために、血液を固まりにくくする薬や、血栓を溶かす薬が使われます。点滴薬や注射薬、飲み薬があり、症状や状態によって使い分けます。

カテーテル治療

脚の付け根や首の血管から、肺の血管内の血栓のある部分まで血栓のある部分までカテーテルを挿入して、血栓を溶かす薬を直接吹きかけたり、吸引したりするなどして、血栓を除去する治療です。

外科的治療

胸を切開して行う開胸手術です。肺に繋がる血管を切り開いて、直接、血栓を除去します。手術は人工心肺を用いて行われます。

予防

脚の血液は、脚の筋肉が動くことで循環しています。そのため、下半身が動かない状態が続くと、脚の血流が停滞することにつながります。このように下半身の血流が悪くなることが大きなリスク要因となるため、適度に歩くことや足の運動をすることが効果的です。寝たままや座ったままの状態でいる必要があるときも、足首や足の指の曲げ伸ばしなどの足関節の運動や、マッサージ、足を頭より高い位置にあげるなど、血流を促進する動作をすることが予防につながります。
 
また、水分不足も血液の濃度が濃くなり、血栓ができやすくなる要因となります。そのため、適度に水分を補給するようにしましょう。ただし、アルコールやカフェインが含まれる飲料には利尿作用があり、摂取した以上の水分が、尿として排出されることがあります。そのため、水分補給にはアルコールやカフェインが含まれていない飲料が推奨されます。

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医師紹介

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宇井 進 医師
神奈川県横浜市
1980年 慶應義塾大学医学部卒業

1980年 慶應義塾大学病院、1982年 東京都済生会中央病院、1988年 ドイツ フライブルク大学病院、1989年 東京都済生会中央病院(1989年より循環器科副医長、1997年より循環器科医長、1998年より循環器科・救急診療科医長、2002年より循環器科・救急診療科部長、2004年 中国 泰達国際心血管病医院客員教授兼任、2005年 中国 貴州省人民医院客員教授兼任)、2009年 府中恵仁会病院(2009年より院長補佐、2013年より院長、2018年より名誉院長)、2018年 調布恵仁会クリニック院長、2019年 亀田病院 循環器科部長。日本循環器学会循環器専門医、日本内科学会認定内科認定医、日本心血管インターベンション治療学会CVIT名誉専門医、日本心臓病学会専門医(FJCC)。専門分野は虚血性心疾患、心不全、循環器全般。