「経口補水液」は“健康のため”に飲んでもいいの?「経口補水液」と「スポーツドリンク」の違いとは【医師解説】

それぞれの特徴や正しい使い分け、熱中症予防で注意したいポイントについて、天王寺やすえ消化器内科・内視鏡クリニックの安江千尋院長に解説してもらいました。
医師紹介
2009年防衛医科大学校医学科卒業。防衛医科大学校病院、自衛隊横須賀病院、自衛隊舞鶴病院などで内科・消化器内科診療に従事した後、がん研有明病院 下部消化管内科にて内視鏡診療・治療を専門に従事。2020年に同病院副医長に就任。2024年12月、天王寺やすえ消化器内科・内視鏡クリニックを開院。日本消化器内視鏡学会専門医・指導医、日本消化器病学会専門医・指導医、日本内科学会総合内科専門医。
目次
「経口補水液」と「スポーツドリンク」は、それぞれどのような飲み物なのでしょうか?
「経口補水液」は脱水時の水分・電解質補給、「スポーツドリンク」は運動時の水分・エネルギー補給と考えると分かりやすいです。

「経口補水液」と「スポーツドリンク」は、どのように使い分ければよいのでしょうか?
迷ったときは、「脱水を改善したいのか」「汗をかいたときの水分補給なのか」を基準にすると分かりやすいでしょう。

「経口補水液」は、下痢や嘔吐、発熱、熱中症などで脱水が疑われる場合に適しています。大量の汗によるめまいや強い倦怠感、筋肉のけいれんなどがある場合にも、水分だけでなく電解質を効率よく補給できるため、軽度から中等度の脱水では第一選択となります。
一方、「スポーツドリンク」は、健康な方が運動や屋外作業などで大量に汗をかいた際の水分補給に適しています。1時間以上の運動や暑い環境での活動では、水だけでは不足しがちな糖分や電解質も補給できるため、運動パフォーマンスの維持にも役立ちます。ただし、日常生活で軽く汗をかく程度であれば、水や麦茶で十分な場合がほとんどです。
熱中症対策でも使い分けが重要です。予防の段階では、水や麦茶を基本とし、必要に応じて「スポーツドリンク」を利用するとよいでしょう。一方、すでに脱水症状がみられる場合には経口補水液が適しています。
ただし、「経口補水液は体に良いから普段から飲む」「スポーツドリンクで十分だから経口補水液は不要」という考え方は適切ではありません。
それぞれ役割が異なるため、体調や状況に合わせて選ぶことが重要です。
熱中症対策の水分補給で、注意すべき点はありますか?
熱中症対策では、「何を飲むか」だけでなく、「いつ飲むか」「どのくらい飲むか」も重要です。

喉の渇きを感じた時点では、すでに軽度の脱水が始まっていることがあります。そのため、暑い日は喉が渇く前からこまめに水分補給を行うことが基本です。
軽く汗をかく程度の日常生活では、水や麦茶で十分な場合がほとんどです。一方、屋外作業やスポーツなどで大量の汗をかく場合には、水分だけでなくナトリウムなどの電解質も補給できる「スポーツドリンク」を利用することも有効です。
熱中症が疑われる症状、例えば大量の発汗、強い倦怠感、めまい、立ちくらみ、筋肉のけいれんなどがみられる場合には、経口補水液が適しています。
一方で、「スポーツドリンク」は糖分を多く含む製品も少なくありません。日常的に大量に飲み続けると肥満や虫歯、糖尿病の悪化につながる可能性があります。また、糖分を多く含む清涼飲料水を大量に摂取することで、急激な高血糖をきたす「清涼飲料水ケトーシス(いわゆるペットボトル症候群)」を起こすこともあります。
逆に、経口補水液も健康飲料ではありません。脱水状態を改善するための飲料であり、普段の水分補給として習慣的に飲むことはすすめられません。
また、熱中症予防には水分補給だけでなく、暑い時間帯の外出を避けること、エアコンを適切に使用すること、帽子や日傘を活用することなども非常に重要です。
なお、意識障害、水分を飲めない、繰り返す嘔吐、高体温が続く場合は重症の熱中症が疑われます。このような場合は経口補水液だけで対応せず、速やかに救急要請または医療機関を受診してください。
子どもや高齢者、持病のある人など、飲み方に特に注意が必要な人はいますか?
熱中症や脱水症は誰にでも起こりますが、子ども、高齢者、持病のある方では重症化しやすく、水分補給にも特に注意が必要です。

子どもは体温が上がりやすく、自分で喉の渇きを十分に訴えられないことがあります。また、遊びに夢中になると水分補給を忘れてしまうことも少なくありません。
そのため、保護者が時間を決めてこまめに水分補給を促すことが重要です。普段は水や麦茶で十分ですが、長時間の運動や大量の発汗時には「スポーツドリンク」を利用することも有効です。一方、下痢や嘔吐を伴う脱水症では経口補水液が推奨されます。
高齢者は喉の渇きを感じにくく、体内の水分量も少ないため、自覚のないまま脱水が進行することがあります。暑さを感じにくいこともあるため、「喉が渇く前から飲む」「室温を適切に保つ」ことを意識することが重要です。
持病のある方も注意が必要です。糖尿病では「スポーツドリンク」の糖分により血糖値が上昇することがあります。また、高血圧、心不全、慢性腎臓病などで塩分や水分の制限を受けている方は、「経口補水液」を自己判断で多量に飲むことは避けるべきです。
利尿薬を服用している方や透析中の方も、水分・電解質管理が必要なため、主治医の指示に従うことが大切です。
「たくさん飲めば安心」というわけではありません。年齢や持病、生活状況に応じて適切な飲み物を選び、体調の変化があれば早めに医療機関へ相談することが、熱中症や脱水症の重症化を防ぐために最も重要です。
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※本記事は特定の病気・症状について一般的な医学情報を解説したものであり、個々の症状や状態に対する診断・治療を保証するものではありません。症状の現れ方・原因・経過には個人差があり、記事内容がすべての方に当てはまるとは限りません。また、本記事の内容は公開日時点の医学知識をもとに作成していますが、ガイドライン・診療方針は変更になる場合があります。


「経口補水液」と「スポーツドリンク」は、どちらも水分補給を目的とした飲み物ですが、作られた目的や成分は大きく異なります。
■軽度から中等度の脱水症の改善に役立つ「経口補水液」
「経口補水液(ORS:Oral Rehydration Solution)」は、下痢や嘔吐、発熱、大量の発汗などによって失われた水分と電解質(ナトリウムやカリウムなど)を効率よく補給するために開発された飲料です。
世界保健機関(WHO)が推奨する経口補水療法をもとに作られており、軽度から中等度の脱水症の改善に役立ちます。
「経口補水液」には、ナトリウムとブドウ糖が適切な割合で配合されています。これは、小腸にある「ナトリウム・ブドウ糖共輸送体」という仕組みを利用し、水分を効率よく吸収するためです。そのため、水だけを飲むよりも効率よく体内へ水分を取り込むことができます。
一方で、ナトリウムを比較的多く含むため、健康な方が日常的な水分補給として飲み続けることは想定されていません。
■運動中のエネルギー補給に役立つ「スポーツドリンク」
「スポーツドリンク」は、運動や屋外活動で汗とともに失われた水分やエネルギーを補給するために作られています。経口補水液より糖分が多く、ナトリウム濃度は低めです。
運動中のエネルギー補給にも役立ち、飲みやすい味に調整されているため、水分摂取量を確保しやすいという利点があります。
ただし、「スポーツドリンク」は脱水症の治療を目的とした飲み物ではありません。糖分が多いため、脱水が進んだ状態では経口補水液ほど効率よく水分を補給できないことがあります。また、習慣的に大量に飲み続けると糖分の摂り過ぎにつながる可能性もあります。