【医師監修】境界型糖尿病・いつの間にか糖尿病予備群に…その生活習慣大丈夫?

2017年2月6日 更新

目次

  1. はじめに
  2. そもそも糖尿病とはどんな病気?
  3. 糖尿病の症状
  4. 糖尿病の初期段階「境界型糖尿病」とは?
  5. こんな生活習慣は要注意!改善と予防のすすめ
  6. どうすればわかる?境界型糖尿病の検査方法
ぽっちゃりした女性のお腹

糖尿病は中高年の男性に多く、肥満度が高いほど有病率が高い傾向があります。しかし、食事の質や量、運動不足などの生活習慣によっては、性別や年齢、体型に関わらず、糖尿病になる可能性があります。

糖尿病は健康な人がある日を境に急に発病するわけではありません。正常な状態から糖尿病になるまでの間には、血糖値の高さによって「正常型」「境界型」「糖尿病型」の3段階に分けられます。

血糖値が正常値とはいえないが、糖尿病とも診断されない値が「境界型」とされ、「境界型糖尿病」「隠れ糖尿病」などといわれています。

境界型糖尿病は糖尿病ではありませんが、血糖値が高めの状態が続くため、いずれ糖尿病になる可能性が高い状態、いわば糖尿病予備軍ということになります。

さらに、境界型糖尿病は、がんやアルツハイマー病のリスクを高めることもわかっています。

「境界型糖尿病」を糖尿病予備軍として捉えるだけでなく、それ自体が病気であると認識して、きちんと対処していくことが重要です。

今回は、糖尿病や境界型糖尿病について、危険な生活習慣や予防なども含めて解説していきます。

ひとたび糖尿病になってしまうと、完治することはなく一生つきあうことになる病気です。そうなる前に、ご自身の生活習慣を見直してみませんか?

そもそも糖尿病とはどんな病気?

人差し指とハテナマーク

糖尿病とは、血液中のブドウ糖濃度(血糖値)を、正常範囲内にとどめておくことができず、血糖値が慢性的に高い状態が続く病気です。

原因はインスリン不足や作用の低下

インスリンとは、すい臓のβ細胞から分泌されるホルモンで、血糖値を下げる働きを持つ唯一のホルモンです。

血糖値は、食事の際に摂取した炭水化物などが消化吸収されて作られたブドウ糖が、血液中に溶け込むことで上昇します。血糖値が上昇すると、インスリンの働きにより、ブドウ糖をエネルギー源として利用したり、余分なブドウ糖は貯蔵用の糖に変換されたりして、血糖値は下がっていきます。

しかし、インスリンが不足したり、インスリン抵抗性がある(インスリンの働きが悪い状態のこと)と血液中のブドウ糖が処理しきれなくなり、血糖値が高い状態(高血糖)が続くことになります。

日本人の9割以上は2型糖尿病

糖尿病は、原因によって大きく2種類に分けられます。

1型糖尿病

ウイルス感染など、何らかの原因によって起こる免疫異常により、すい臓のβ細胞が破壊され、インスリンを分泌することができない または 十分に分泌できず、自力で血糖値をコントロールすることができません。

  • 生活習慣や肥満が関係することはありません
  • 1型糖尿病の患者は全体の約5%程度です
  • 小児期や青年期に発症することが多いです

2型糖尿病

食事の質や量、運動不足、肥満などの生活習慣に、年齢や遺伝的要因が重なって、インスリンの分泌が少なくなったり、働きが悪くなる(インスリン抵抗性)ことで、自力で血糖値のコントロールができなくなってしまいます。

2型糖尿病は生活習慣が大きく関わることから、生活習慣病ともいわれています。

  • 生活習慣や肥満が関係しています
  • 糖尿病患者の9割以上が2型糖尿病です
  • 中年以降に多く、小児期には少ないです

なぜ生活習慣によってインスリンが分泌されなくなるのでしょう?

不摂生な生活習慣(食事の質や量、運動不足)はブドウ糖が過剰に作られたり、それを消費できずに余ってしまったりして、高血糖の状態になります。

すると、その血糖値を下げるため、すい臓のβ細胞はインスリンをたくさん分泌しなくてはならず、すい臓やβ細胞に過度な負担がかかります。

その状態が続くと、すい臓やβ細胞は疲弊して、働きの悪いインスリンを分泌するようになったり(インスリン抵抗性)、インスリンを分泌することができなくなっていき、やがてβ細胞は壊れてしまいます。壊れたβ細胞は再生することはなく、インスリンを分泌することができなくなります。

このように生活習慣によって、すい臓やβ細胞が疲弊したり、β細胞が壊れることでインスリンが正常に分泌されなくなってしまいます。

糖尿病の症状

初期の糖尿病には、ほとんど自覚症状がありません。かなり高血糖の状態になってから出てくるのが、以下のような症状です。

  • のどの渇き、よく水を飲む
  • 尿の量、回数が増える
  • 何もしないのに体重が減る
  • 疲れやすい
    など

怖いのは糖尿病の放置→悪化→合併症

糖尿病の怖さは、初期のうちは自覚症状がでづらいため、気づかないうちに病状が進んでしまったり、気づいていても、自分が病気であるという意識が薄くなりがちなため、放置して知らずに悪化させてしまうことです。

糖尿病になってからすぐに合併症が起こることはありませんが、放置した状態で年月を経ると、さまざまな合併症を併発するリスクが高まります。

代表的なものには、下肢の切断や失明、透析治療が必要になるなどの重い合併症や、脳血管疾患(脳卒中、脳梗塞など)や心血管疾患(狭心症、心筋梗塞など)の発症リスクも高まります。

糖尿病の初期段階「境界型糖尿病」とは?

前述のとおり、「境界型糖尿病」は、血糖値が正常値とはいえないが、糖尿病とも診断されない値に位置することで、糖尿病ではありません。

しかし、糖尿病の初期に自覚症状がないように、さらに初期段階である「境界型糖尿病」にも自覚できる症状はなく、この段階では気づかずに放置されがちなため、糖尿病まで悪化してしまう可能性が高い状態です。

また、「境界型糖尿病」は糖尿病と同じく、がんやアルツハイマー病のリスクが高い状態でもあります。

「境界型糖尿病」は治る可能性があります!

糖尿病は、すい臓のβ細胞が壊れて回復できないダメージを受けている状態で、完治することはありません。残されたβ細胞のインスリン分泌能力を上手に機能させながら一生つき合っていく必要があります。

一方、境界型糖尿病は、すい臓のβ細胞は疲弊しているだけの状態であることが多く、自然に治ることはありませんが、食生活や運動など生活習慣を改善することで、正常な状態に戻せる可能性があります。

生活習慣を改善することは、過剰なブドウ糖を作らせず、余分なブドウ糖の消費を促進するということです。 そうすることで、すい臓やβ細胞の負担が減り、β細胞を十分に休ませることができれば、インスリンの分泌機能も回復させることができます。

こんな生活習慣は要注意!改善と予防のすすめ

ナイフとフォークを添えたサラダ

糖尿病となる原因は、年齢や遺伝的な要素と、日頃の生活習慣が大きな影響を与えます。次のような生活習慣を続けている人は、要注意!糖尿病の発症リスクも高く、すでに境界型糖尿病の状態である可能性も考えられます。

年齢や遺伝的な要素の改善できませんが、生活習慣は普段の生活を変えることで改善できます。糖尿病になってしまう前に!あてはまっているものはないか、ご自身の生活習慣を見直してみませんか?

慢性的な食べ過ぎ・飲み過ぎ

前述のとおり、血糖値は、食べ物や飲み物が消化されて作られたブドウ糖が、血液中に溶け込むことで上昇します。そのため、食べ過ぎや飲み過ぎは、ブドウ糖が大量につくられることになり、血糖値の上昇に直結します。

慢性的な食べ過ぎや飲み過ぎは、慢性的な高血糖の状態を作り出すことになり、糖尿病になる可能性が高くなります。

また、糖尿病はその名前から、「糖」すなわち甘いもののとり過ぎで起こると思われがちです。実際、甘いもの、特にお菓子や清涼飲料に多く含まれる糖質は血糖値を上げやすいことがわかっていますが、糖尿病の引き金になるのは、単に甘いもの(糖質)というより、脂質なども含めたエネルギーのとり過ぎです。

糖尿病を予防するためには、食事の改善が基本です。特別な食事制限などは不要です。適切な量をバランスよく食べることが大切です。

  • 食事量は腹八分目程度
  • 好き嫌いなくバランスよく食べる
  • 間食は控えめに、余分に食べない
  • よく噛んでゆっくり食べる

○1日あたりの適切なエネルギー量の計算
1日の適正なエネルギー量 ( kcal ) =
標準体重 ( kg ) ( 注1 ) × 身体活動量( 注2 )

注1 ) 標準体重
標準体重 ( kg ) = 身長 ( m ) × 身長 ( m ) × 22

注2 ) 身体活動量
軽労作 ( デスクワークが多い職業など ) :
25~30 ( kcal / kg 標準体重 )
普通の労作 ( 立ち仕事が多い職業など ) :
30~35 ( kcal / kg 標準体重 )
重い労作 ( 力仕事が多い職業など ) :
35~ ( kcal / kg 標準体重 )

運動不足

運動量が不足していると、エネルギー源であるブドウ糖の消費が少なくなり、高血糖の状態になりやすくなります。さらに、運動不足が続いて筋肉量が落ちると、インスリンの働きが悪くなる(インスリン抵抗性)ことがわかっています。

その結果、高血糖の状態が続いたり、血糖値が下がりにくくなるため、糖尿病になる可能性が高くなります。

特に激しい運動をする必要はありません。日常での活動量を増やしたり、休日にウォーキングやジョギング、その他趣味の運動などをすることで、糖尿病のリスクが低下することがわかっています。
食後の血糖値がピークになる前の食後1時間以内、できれば30分以内に行うと、より効果的です。

○日常での活動量を増やすコツ

  • 通勤や買い物などの外出時に歩く、歩く距離を増やす
  • 階段を使う
  • 家事など日常動作の中でストレッチや足踏みを取り入れる

肥満

糖尿病は、肥満度が高いほど、有病率が高くなる傾向があります。

肥満の原因でもある内臓脂肪は、インスリンの働きを邪魔するホルモンを分泌します。インスリンの働きが邪魔されるとインスリン抵抗性(インスリンの働きが悪い)の状態になり、血糖値が思うように下がらないため、すい臓のβ細胞は多くのインスリンを分泌して働きを補おうとします。

この状態が続くと、過度な負担がかかっているすい臓やβ細胞はやがて疲弊してしまい、糖尿病のリスクが高くなります。

BMI値22.0は、肥満との関連が強い「糖尿病・高血圧・高脂血症」にもっともかかりにくい数値とされています。肥満に分類されるのは、BMI値25.0以上、体脂肪率での肥満値は、男性は25%以上、女性は30%以上とされています。

肥満の原因は、遺伝的な要素より環境や生活習慣的な要素が大きいと考えられているため、バランスの良い食生活や継続的な運動を取り入れることが第一です。前述した食事や運動の項目を参考に、肥満の予防・改善に取り組みましょう

○BMI ( Body Mass Index ) 値の計算 :
体重 ( kg ) ÷ ( 身長 ( m ) × 身長 ( m ) )

喫煙

喫煙には血糖値を上昇させる作用に加えて、インスリンの働きが悪くなる(インスリン抵抗性)作用があります。また、喫煙本数が多いほど糖尿病になりやすいことがわかっています。

禁煙をすると、糖尿病のリスクは低下します。一方で、禁煙をすると体重の増加を伴うことがあり、これが血糖値の上昇につながることがありますが、禁煙による健康への効果のほうがはるかに大きく、この血糖値の上昇はわずかな問題でしかありません。

糖尿病に限らず、喫煙が健康に悪影響を与えることは明らかです。禁煙補助薬や禁煙外来を利用するなど、できるだけ早く禁煙をすることが大切です。

過度の飲酒

アルコールには、飲酒後に一時的に血糖値を上昇させる作用があるため、大量の飲酒は糖尿病のリスクを高めることになります。また、飲酒時に摂る食事はカロリー過多になりやすく、血糖値上昇を助長する場合があります。

一方で適度な飲酒は、糖尿病の予防効果があるという研究結果もあります。1日1合程度が適量とされています。休肝日を設けながら、適量を楽しむ飲酒習慣をつけましょう。

どうすればわかる?境界型糖尿病の検査方法

血液検査項目の一覧

ご自身の生活習慣を振り返って、既に境界型糖尿病かも、、、と不安になった方はいませんか?
境界型糖尿病は、糖尿病の検査と同じく血液検査の各数値で判断します。

一般的な健康診断や血液検査で測定することの多い項目もあるので、次の解説を参考にご自身の結果を確認してみてください。

糖尿病診断と糖尿病型スケール

空腹時血糖値

10時間以上食事をしていない空腹時の血液を採取して血糖値(空腹時血糖値)を測定します。

空腹時血糖値は一般的な健康診断で測定することの多い項目です。ぜひ直近の健康診断結果を確認してみてください。

負荷後(75gOGTT)2時間血糖値

空腹時の採血後、75グラムのブドウ糖が入った液体を飲み、飲んだ後、30分・1時間・2時間後にそれぞれ血液を採取して血糖値を測定します。

随時血糖値

空腹時や食後からの時間を問わずに採血をして血糖値を測定します。随時血糖値が200mg/dL以上の場合は糖尿病型となります。境界型の診断値はありません。

ヘモグロビンA1c(HbA1c)値

採血をして糖化したヘモグロビンの割合を測定します。HbA1c値に限ると、食前・食後など、採血のタイミングに制限はありません。

ヘモグロビンは赤血球中のたんぱく質の一種で、血液中の糖と結合(糖化)する性質をもっています。血糖値が高いほど、ヘモグロビンに結合する糖が多いということなので、糖化するヘモグロビンも多くなります。糖化したヘモグロビンはHbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)と呼ばれます。

食事や運動などの影響で日々変動し続ける血糖値とは異なり、HbA1c値では、赤血球が体内を循環している間、過去1~3ヶ月の平均的な血糖の状態を知ることができます。

HbA1c値は一般的な健康診断や血液検査で測定することの多い項目です。ぜひ直近の健康診断や血液検査の結果を確認してみてください。

以上のような検査は、糖尿病外来のある医療機関や内科で受けることができます。また、家庭用の「血糖値測定器」でも測定することができます。

ただし、検査結果により治療や生活習慣の改善など、医師からのアドバイスや指導が必要になる場合があるため、医療機関での検査をお勧めします。

境界型糖尿病や糖尿病で気になることがある場合は、かかりつけ医や専門の医療機関に相談しましょう。病院なびでは、境界型糖尿病に関連する以下の診療を受けられる医療機関を検索できます。

■ 参考サイト

糖尿病で気になる症状がある場合は、近くの病院に相談しましょう

を探す。

※当コラムは東京内科医会のご協力によって作成されています。

東京内科医会は、常に最新の医学知識を学び、最良の医療を実践する魅力を持った何かを主体に、診療を行っている医師の集まりです。

コラム監修

Thumb-up菅原医院
東京都練馬区石神井町3-9-16
菅原 正弘 院長
医学博士、日本内科学会評議員、日本リウマチ学会評議員・専門医、日本糖尿病学会、学術評議員・専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、東京内科医会 会長

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菅原 正弘洋先生
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