IgA腎症 - 病院・クリニック
IgA腎症とは、腎臓で血液をろ過して尿を作る役目をしている「糸球体」に免疫グロブリン(血液中や組織液中に存在するタンパク質)の一つであるIgAが沈着することによって起こる慢性糸球体腎炎※の一つです。 ※慢性糸球体腎炎とは、糸球体に炎症が起こり、血尿やたんぱく尿などの症状があらわれる病気の総称
発症初期には自覚症状はほとんどありません。そのため、日本では約7~8割の患者さんが、学校検尿や職場などで実施される尿検査をきっかけに発見されています。
治療をしないまま放置すると透析治療が必要な腎不全へ至ることもあるため、早期発見・早期治療がとても大切です。
IgA腎症の原因
IgAとは免疫グロブリン(Immunoglobulin)Aの略称で、体外から侵入した細菌やウイルスと戦う抗体の中のひとつで、通常は、のどや気管支、腸などの粘膜を守っています。
はっきりとした原因は残念ながら明らかにされていませんが、リンパ球の機能異常やウイルスや細菌感染などがきっかけで異常なIgAが作られると考えられています。 そして、この異常なIgAは血液にのって腎臓へと流れつき、腎臓の糸球体に沈着して炎症が起こり、糸球体が正常に働かなくなることによって、血尿やタンパク尿がでるようになります。
また、遺伝要因に関しても今のところは明らかにされていませんが、IgA腎症の患者さんの約1割が家族にも同じ病状が見られることから、遺伝や体質が関係しているのではないかと想定されています。
IgA腎症の症状
IgA腎症を含む腎臓の病気は症状があらわれにくいことが特徴です。 初期症状として、
- 肉眼でわからないほどの血尿
- タンパク尿 があげられますが、見た目ではわかりにくいため、約7~8割は学校検尿や検診で発見されます。
初期の段階で、気づかずに病気が進行すると、腎機能が低下することにより、
- 肉眼でもわかるほどの血尿
- むくみ
- 高血圧 などの症状があらわれます。
さらに、治療せずに放置していると、成人では20年で30~40%が、小児では15年で11%が、腎臓の機能が低下して腎不全になり透析が必要となります。
IgA腎症の治療方法
治療は、腎臓の機能、タンパク尿の程度や腎生検の結果などによって患者さんごとに異なりますが、生活規制、食事療法、血圧のコントロールが治療の基本となります。
日本腎臓学会の「IgA腎症治療指針」では、透析導入リスクで予後分類していて、リスクごとに異なる治療が検討されます。また同じリスク分類の人でも患者さんの状態によって治療の内容が調整されます。
■IgA腎症の予後分類と治療指針
【低リスク群-透析療法に至るリスクが少ない人】
- 生活指導 運動制限を行う必要はないが、改善すべき生活習慣があれば正す
- 食事療法 ・過剰の塩分摂取を避ける ・過剰なタンパク質摂取を避ける(0.8-1.0g/kg 標準体重/日以内)
- 薬物療法 ・必要に応じて、抗血小板薬や降圧薬を用いる ・糸球体に急性活動性病変がある場合には、副腎皮質ステロイド療法(パルス療法を含む)を検討する
【中等リスク群-透析療法に至るリスクが中程度ある人】
- 生活指導 血圧、尿タンパク、腎機能などをみながら運動量を調節
- 食事療法 ・血圧、尿タンパク量、腎機能に応じたタンパク質の摂取 (0.8~1.0 g/kg 標準体重/日) ・食塩の制限 (基本は 6 g/日未満)
- 薬物療法 ・血圧、尿タンパクの量に応じて、抗血小板薬や降圧薬、副腎皮質ステロイド療法(パルス療法を含む)を用いる ・糸球体に急性活動性病変がある場合には、副腎皮質ステロイド療法(パルス療法を含む)の適応を積極的に検討する
【高リスク群-透析療法に至るリスクが高い人】
- 生活指導 血圧、尿タンパク、腎機能などをみながら運動量を調節
- 食事療法 ・血圧、尿タンパク量、腎機能に応じたタンパク質の摂取 (0.8~1.0 g/kg 標準体重/日) ・食塩の制限 (基本は 6 g/日未満) ・必要に応じてカリウムの制限を行う
- 薬物療法 ・血圧、尿タンパクの量に応じて、抗血小板薬や降圧薬、副腎皮質ステロイド療法(パルス療法を含む)用いる ・糸球体に急性活動性病変がある場合には、副腎皮質ステロイド療法(パルス療法を含む)の適応を積極的に検討する
【超高リスク群-5年以内に透析療法に至るリスクが高い人】
- 生活指導 血圧、尿タンパク、腎機能などをみながら運動量を調節 妊娠・出産には特に注意が必要
- 食事療法 ・血圧、尿タンパク量、腎機能に応じたタンパク質の摂取 (0.8~1.0 g/kg 標準体重/日) ・食塩の制限 (基本は 6 g/日未満) ・適切なカリウムの制限を行う
- 薬物療法 ・血圧、尿タンパクの量に応じて、抗血小板薬や降圧薬、副腎皮質ステロイド療法(パルス療法を含む)用いる ・糸球体に急性活動性病変がある場合には、副腎皮質ステロイド療法(パルス療法を含む)の適応を積極的に検討する ・腎臓機能が著しく低下している場合には、ステロイドによる効果が弱いと考えられるため、腎不全の治療を行う
■IgA 腎症の主な薬物療法
- 降圧薬 高血圧やタンパク尿がでている場合に、降圧薬を使用することで糸球体の圧力が下がり、腎臓の機能を保護する効果が期待できます。
- 経口副腎皮質ステロイド薬 ステロイド薬は腎臓の炎症を抑える目的で用いられます。炎症の勢いや腎臓の機能、タンパク尿の程度などを考慮して用いる量や投与期間などを決めます。
- ステロイドパルス療法 ステロイドを短期的に集中投与する治療法です。点滴で副腎皮質ステロイドを3日間連続投与、さらに2か月毎に合計3回繰り返す方法が一般的です。 血中に存在する異常IgAや腎臓に沈着しているIgAを抑えて、さらに糸球体で起きている炎症も抑制する効果が期待できます。
- 免疫抑制薬 ステロイド薬の効果が乏しいときに、免疫抑制剤を併用されます。腎臓の機能保持が期待できます。
- 抗血小板薬 タンパク尿の減少の効果が期待できます。
- 抗凝固薬 腎生検で半月体形成や糸球体硬化などの特徴が確認されるときには抗凝固薬の使用が検討されます。血小板の活性化を抑えることで、IgA腎症の進行を予防します。
■扁桃摘出術(扁摘)+ステロイドパルス療法
2019年現在、日本では、扁桃腺の摘出手術とステロイドパルス療法とを組み合わせた「扁摘パルス療法」が主流となっています。
扁桃腺の摘出手術は、扁桃腺を含む口腔内感染によって、IgA腎症を起こす異常なIgAが産生されると考えられていて、その原因を除去するために行われます。
また、ステロイドパルス療法は、上述のとおり、すでに血中に存在する異常IgAや腎臓に沈着しているIgAを抑えるとともに、糸球体で起きている炎症も抑制する効果があります。
腎機能が正常で、血尿やタンパク尿が多く、腎生検で活動性病変の多い場合、さらに長期に渡り腎機能保持する必要のある若年者などに適応されます。
- 関連項目
- 高血圧
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